岩盤・開発機械システム工学研究室の紹介

スタッフ
Staff
教授 島田 英樹

Professor
 Hideki SHIMADA

准教授  笹岡 孝司

Associate Professor
Takashi  SASAOKA

助教 濱中 晃弘

Assistant Professor
Akihiro  HAMANAKA








 岩盤・開発機械システム工学研究室では、地球環境適応型ジオメカニクスの教育や研究を行っています。現在の主な研究テーマは、環境低負荷型型マイニングシステムの開発 、地球環境を考慮した露天掘り鉱山のリハビリテーション、資源循環型社会構築のための石炭灰の有効利用方法、生活環境を考慮した都市ライフラインの施工方 法、高レベル放射性廃棄物やCO2ハイドレートの安全な地層処分方法の開発、LPG・LNG等の地層貯留、メタンハイドレートの採取に伴う岩盤の安定性な どが挙げられます。



Highwall Mining System
研究方針(目指すもの)

  当研究室では、これまで主に石炭鉱山、石灰石鉱山等における岩盤工学の諸問題を対象とした実用的な研究に取り組んできたが、国内資源産業の斜陽化に伴い、 これまでの研究を基礎として海外への展開、すなわち海外の研究機関、大学、企業との共同研究をはじめ、都市ライフラインの開発やそれに伴う環境問題などに も研究対象を拡げている。

〜最新の研究トピックス〜

CO2 の岩盤及び深海底隔離処分におけるフライアッシュセメントによるキャッピングレイアーの流動・固化特性

1.研究開発の背景と目的

 副次的に生産される石炭火力発電所からのフライアッシュの有 効利用の観点から土木分野での利用拡大の研究を行ってきたが、今後年間400万トン程度のフライアッシュが未利用のまま管理処分せざるを得ない状況を考慮 するとこれらの大量の未利用フライアッシュを積極的に利用する分野の開拓が必要である。

 また、石炭火力発電による大量の CO2の必然的な排出についても、地球環境保護の観点からCO2の未採掘石炭層や石油:天然ガスの既採掘層、あるいは苦鉄質岩盤中への処分の可能性につい て検討してきたが、残念ながら技術的な面及び処分場の確保の観点から実現性はほとんど困難であると予測される。そこで、CO2の岩盤中への処分場としては ほとんど制約が無く、深海底隔離処分においてはメタンハイドレートの既採掘箇所を利用することで隔離場所の問題もなく、さらにフライアッシュセメントによ るキャッピングレイアー形成によりCO2の周辺岩盤への浸透や海水中への熔解を長期的に完全に防止することで、地下環境や海洋環境の破壊を抑制することが できる 方法を提案する。


2.研究開発の内容
 CO2を岩盤中や深海底に隔離処分する方法の実現性は極めて大きく、このような場合、天然の環境条件を利用するだけでなく、石炭火力発電所 からの大量のフライアッシュを利用してCO2を安定的に岩盤中や深海底に隔離処分するためのフライアッシュセメントによるキャッピングレイアー形成技術を 開発するための基礎研究を行う。

1)  岩盤処分:地下岩盤中に人工的に破砕帯を形成し、CO2 を圧入して貯留層をつくり、周辺岩盤への拡散を防止するためにフライアッシュセメントの注入によるキャッピングレイアーを貯留層周辺に形成する。
2)  深海底処分:海底下のメタンハイドレートの採掘により生じた海底の窪地やもともとの窪地にCO2 ハイドレートを沈積させ、CO2の海水への溶解を抑制するために、その上にフライアッシュセメントでキャッピングレイアーを形成し、長期にわたって安定に貯留させる。

概 念 図
主な研究テーマ

  1)地球環境を考慮した露天掘り鉱山のリハビリテーションに関する研究
  現在、環境問題に対する関心は非常に高く、鉱山開発におけるリハビリテーションの重要性が増大している。リハビリテーションは、終掘後の再緑化のみを取り 扱うのではなく、斜面の浸食や河川の汚濁、酸性鉱排水(Acid Mine Drainage;AMD)等を防止するために、操業前から検討されるべきものである。したがって、リハビリテーションプログラムが適切に実施されれば、 終掘後には採掘前の状態にまで環境を復元することが可能である。このことにより、政府ならびに地域住民からの信頼を得ることができ、持続的な操業を行うこ とが可能となる。そこで、露天掘り石炭鉱山におけるAMD対策に関する問題の抽出とその対策についての検討を行う。

  2)新たな環境負荷低減型マイニングシステムに関する研究
  パンチルームアンドピラーマイニングは、ルームアンドピラーをハイウォールマイニングに導入したマイニングシステムである。低コストで、種々の条件の変化 に柔軟に対応でき、最大限の実収率を得ることができ、周辺環境にも優しいマイニングシステムである。また、アメリカではルームアンドピラーでロングウォー ルに匹敵する生産性をあげている例もあり、その導入に際しては、日本からの技術移転が可能である。そこで、数値解析を用いてパンチルームアンドピラーマイ ニングを適用した場合のハイウォール周辺の変位や応力状態について把握するとともに、環境に配慮し効率よく採掘を行うために、採掘空洞を充填する検討も行 う。

  3) 都市ライフライン施工方法における岩盤掘削の適用性に関する研究
  わが国は、国土が狭い上に都市に人口や経済拠点が集中し、過密な都市構造となっている。この都市構造の中では、上下水道、ガス、電力、通信ケーブル等のラ イフラインの管埋設や洞道工事は、都市部の地下浅部空間に施工せざるを得ない。このような長距離、曲線推進現場への適用を目指したものが、近年発展のめざ ましい都市ライフライン施工法であり、当研究室では国内外でもこれを取り扱う数少ないグループである。現在、ライフラインの敷設は都市から地方に移行し、 堆積層から玉石層、岩盤層などの対象土質に対する施工の要求が増大している。そこで、推進工法の岩盤掘削適用時の諸問題を把握し、岩盤掘削を効果的に施工 する方法についての検討を行う。

  4) 地球環境を考慮した石炭灰の高度利用に関する研究
  副次的に生産される石炭火力発電所からの石炭灰の有効利用の観点から土木分野での利用拡大の研究を行ってきたが、
今後年間400万トン程度の石炭灰(フライアッシュ、クリンカアッシュ)が未利用のまま管理処分せざるを得ない状況を考慮するとこれらの大量の未利用石炭 灰を積極的に利用する分野の開拓が必要である。CO2の地層処分や深海底下処分においても、周辺環境にCO2を長期間安全に貯蔵していくために積極的に未 利用石炭灰を利用する必要がある。また、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関連して、人工バリアーとして考えられているベントナイトの代替物として石炭灰 を利用することも可能である。そこで、石炭灰の特性を把握するとともに流動・充填・固化特性について種々検討する。

  5)高レベル放射性廃棄物地層処分における岩石のクリープ評価に関する研究
 高レベル放射性廃棄物の地層処分やLPG、LNGの地下貯蔵の長期的な利用に関しては、その精密設計や健全性の評価が
改めて問題となっている。岩盤構造物の長期安定性について検討するためには、種々の外力条件下のクリープ現象を把握する必要がある。外力条件として地下深 部における地山応力、環境条件として地下深部の地温や廃棄体から放出される熱や地下水等が挙げられ、これらの外力や環境が岩石のクリープに及ぼす影響につ いて考慮する必要性がある。そこで、産総研と共同で温度と封圧を変化させてクリープ試験を行い、種々の環境下において岩石の挙動がどのように変化するのか について検討する。

共同研究

海外の大学
インドネシア・バンドン工科大学、インドネシア科学院、チェコ・オストラバ工科大学、インド・岩盤工学研究所、オーストラリア・カーティン大学

海外の企業
三井松島オーストラリア

国内の研究所
産業技術総合研究所

国内の企業
三井松島産業、九州電力、九電産業、NTTアクセスサービス研究所、協和エクシオ、花王、テルナイト 
その他推進技術関連会社 など



岩盤・開発機械システム工学研究室学生の国際活動(2000-2005)
オーストラリア・マッセルブルック炭鉱におけるオーガーマイニングのケーススタディ
オーストラリア・ワンボ炭鉱におけるオーガーマシンのカッティングビット摩耗解析
オーストラリア・カーティン大学における岩盤応力のAE解析
インドネシア露天掘り鉱山におけるリハビリテーションモニタリング、発破振動計測
インドネシアPongkor金鉱山における岩盤亀裂の観察
インドネシア・KPC炭鉱およびTanjung Enim炭鉱における酸性排水のモニタリング
バンドン工科大学における石炭鉱山岩石試料の力学的特性値の解析など

2009年3月 第2回炭素資源学国際会議(ITB) 懇親会にて

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