拡径推進工法における周辺地山および周辺構造物への影響に関する解析的研究

岩盤・開発機械システム工学研究室 修士2年 渡部 仁志



1. はじめに

 地下に埋設された管渠の寿命はおよそ50年と言われており、大都市における法的耐用年数を超えた老朽管の距離は毎年増加している。そこで、本 研究では改築推進工法のひとつである拡径推進工法に着目し、拡径破砕に伴う周辺地山および周辺構造物への影響について解析的に種々検討した。

2. 拡径推進工法の概要

 拡径推進工法では、既設管の中に円錐形状の破砕機を挿入し、破砕機内に組み込んだ油圧ジャッキにより 拡大させて、既設管を内側から押し拡げながら既設管が破砕される。その後、破砕機を縮小させ、後方から押込装置から推進力を与えることにより新管が挿入さ れる。図1に拡径推進工法の概要を示す。    


図1 拡径推進工 法の概要
                                                                    
3. 三次元解析

 まず、三次元解析により破砕機の段階的な拡径および縮小工程を考慮に入れて検討を行った。その結果、拡径に伴う周辺地山および周辺構造物への 影響について検討する場合には、二次元解析により得られた結果と大差ないことが確認された。

4. 二次元解析

 次に、二次元解析により拡径破砕に伴う周辺地山および周辺構造物への影響について検討した。解析モデルは、図2に 示すように対称性を考慮して1/2モデルとした。本解析においては、側圧係数は1とし、境界条件は以下のように設定した。

  ・    上端は地表面とし、拘束しない。
  ・    右端・左端では水平方向は固定、鉛直方向は可動である。
  ・    下端では水平方向は可動、鉛直方向は固定とした。   
     

図2 解析モデル
 図中における左側の管の外側に対して強制変位を与えること により拡径をシミュレートした。なお、解析領域は6×8m、埋設深度は3mである。 また、既設管および周辺管ともに管径0.25mとし、拡径量Dを0.052, 0.073および0.104mを与え、既設管と周辺管の中心間距離Lは1.0, 1.5および3.0mと変化させた。既設管については、管厚20mmのコンクリート管と5mmの塩化ビニル管について検討した。
 
解析結果

 解析の一例を図3に示す。なお、図3は周辺管付近の破壊状況を示しており、白が多いほど破壊が卓越していることを意味している。この図より、 コンクリート管では破壊が生じる条件でも、塩化ビニル管では破壊が生じないことが分かる。



図3 管材質に関する検討

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