推進工法を用いたパイプルーフ工法における周辺地山の安定性 に関する研究
岩盤・開発機械システム工学研究室         修士2年 安田 篤

1. はじめに
 都市部における上下水道、ガス、電力、通信ケーブル等のライフライン施工の需要により、推進工法は埋設工法の中でも有効な方法として多用され、急速な進 歩 を遂げてきている。都市部において下水道普及率は既に63%を超えており、他の生活関連整備に伴う管路構築においても一段落の傾向にある。このため、推進 工法の従来からの管埋設工法への適用は今後減少傾向にあると推測される。このような理由により、現在推進工法の新たな適用方法が模索されており、山岳トン ネルの長距離先受け工法や地下浅部のアンダーパス先受け工法への適用が検討されている。しかしながら、推進工法を用いた先受け工法に関する地山の安定性等 の研究は、これまでほとんど行われていないのが実状である。
 そこで、本研究では推進工法を用いた先受け工法の周辺地山の安定性について検討するために、二次元有限要素解析プログラムPhase2を用いて解析を 行った。
2. 解析方法および解析モデル
 本解析では、先受け工法の一つであるパイプルーフ工法に推進工法を適用した場合の周辺地山の安定性を検討するために、馬蹄形、円形、矩形の3つの形状の トンネルに対して土被りや地質状態を変化させて種々の数値解析を行った。解析の一例として、以下に馬蹄形トンネルにおける解析モデルおよびその結果を示 す。
・周辺地山:シルト混じり粗砂
・土被り:6.5m
・パイプルーフの径:1m
・トンネル−パイプルーフ間の距離:50cm



図1 馬蹄形トンネルにおける解析モデル 図2 解析結果(トンネル周辺の破壊領域)
 解析結果より、トンネル側部に破壊領域が大きく広がってい ることが分かる。これは、トンネル下半分のパイプルーフにより保護されていない部分における変形が大きいため、その変形に引きずられるように破壊が卓越し たと考えられる。

3.まとめ
 本解析結果の一つとして以下のようなことが明らかになっ た。すなわち、どのような形状のトンネルにおいても、パイプルーフ数の増大、パイプルーフ径の増大 により、周辺地山の破壊領域の減少ならびに地表面沈下の抑制が可能である。また、トンネル−パイプルーフ間の距離が小さくなるほど、破壊領域および地表面 沈下を抑制できるが、実際の施工においては、パイプルーフがトンネルに近いとパイプルーフ自身がトンネル内に崩落する恐れがあるため、実際の現場にあわせ て必要最小限の距離をとる必要がある。
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