フライアッシュセメントを用いた震災復旧時の
ガス漏洩抑制ブロック遮断剤の開発


 岩盤・開発機械システム工学研究室 4年 前畑 瑞紀


 
1. はじめに
 震災復旧の際、ライフラインの一つであるガスの早期供給再開は大きな課題の一つである。これは、ガス管が地下埋設管であり、復旧に多大なる時間を要するためである。この問題を克服するために、薬液注入工法で一般的に用いられているセメントに珪酸ナトリウム溶液を混合した薬液を用いて硬化時間の短縮が図られているが、現実には十分な成果が得られていないという報告も少なくない。
 そこで、上述のような充填の迅速性が要求されるガス漏洩抑制ブロック遮断剤の開発を行うために、本研究ではフライアッシュセメントに珪酸ナトリウム溶液を混合させたゲルタイム10〜20秒以内の材料の開発を目指し、種々の試験を行った。


 2. ブロック遮断剤が具備すべき条件および試験
 今回開発するブロック遮断剤では、以下の条件を満たす必要がある。
@ 注入後10〜20secでゲル化すること → ゲルタイム測定
A 注入後5時間以内に遮断効果を発揮すること → 一軸圧縮試験(5時間養生の試料を用いた)
B 遮断能力を1ヵ月程度以上有すること → 一軸圧縮試験(28日養生の試料を用いた)
C 遮断剤がガス管内壁に確実に圧着し、ガス圧に対する耐荷力を有すること → 付着試験
D 圧着した遮断剤が確実にガスの漏洩を防止すること → 簡易透水試験
 なお、付着試験には、75×250mmのアクリルパイプモールド管を用いて供試体を作製し、1日間自然養生させ、アクリルパイプモールドの上部に重錘を載せ、養生した試料がモールドから動き出す応力を圧着強度と定義した。


3. フライアッシュセメントを用いたブロック遮断剤の開発
 二液を混合させて固化させ地盤改良等に利用される薬液注入では、珪酸ナトリウム溶液の濃度がゲルタイムに影響を及ぼすと言われている。そこで、まずA材の珪酸ナトリウム溶液の濃度を決定するため、B材を早強セメント208g、フライアッシュ(原粉)83g、機能材167g、添加材65g、水283gで固定し、A材の濃度を20〜50%まで5%刻みで試料を作製した。その際、溶液の温度を5〜40℃まで5℃刻みの8種類に分けてゲルタイムを測定した。その結果、最適なゲルタイムを示すA材の濃度が30%であることが分かった。
 次に、B材を選定するため、A材の珪酸ナトリウム溶液の濃度を30%で固定し、表1に示すようにB材の配合を変化させ、一軸圧縮試験、圧着試験、簡易透水試験を行った。なお、サンプルA群はフライアッシュ(原粉)をサンプルC群は骨材として利用されるタンカルを用いた。試験結果の一例として、表2に各配合におけるゲルタイムを示すが、ブロック遮蔽剤の具備すべき条件に満足する試料は、A6、A8、A10であることが分かる。さらに、前述の一軸圧縮試験、付着試験、簡易透水試験を総合的に判断すると、A6がブロック遮蔽剤として最も適していることが分かり、ガス漏洩防止効果の期待できるブロック遮断剤の開発に成功した。


 

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