NAF/PAF廃石を用いた互層カバーシステムによる
AMD抑制に関する研究


 岩盤・開発機械システム工学研究室 4年 廣戸 洸


 1. はじめに

 インドネシアの石炭鉱山のほとんどが露天採掘により操業が行われているが、一部の廃石に含まれるPyriteと水、酸素が反応することにより発生する酸性鉱山排水(Acid Mine Drainage)による環境汚染が問題となっている。 インドネシアKPC鉱山では、Non Acid Forming(NAF)廃石カバーによるAMD抑制対策が行われているが、NAF廃石が十分確保できない場合にはこの方法を適用することができない。
 
 これまでの研究によると、このような環境下では@NAFカバー層にPAF廃石を混合して埋め戻す方法が、NAF/PAF層状埋め戻し法に比べAMDを効果的に抑制できること、A廃石のNet Acid Producing Potential値によってPAF混合割合を決定できること、等が明らかにされている。しかしながら、実施工においては、異種の岩石を均一に混合して埋め戻すことは極めて困難である。

 このような背景から、本研究ではNAF廃石が少ない鉱山において、NAF/PAF廃石の互層によるカバーシステムのAMD抑制への有用性について種々検討を行った。

 そこで本研究では、ハイウォールマイニングシステムにおいて最適なピラー設計を行うための基礎的な知見を得るために、採掘空洞の形状およびピラー幅の、ピラー強度に及ぼす影響について室内模型実験および数値解析により種々検討した。

 2. 試験概要

 一連の試験にはBerau鉱山から採取した3種類の岩石試料Q10、T3、T4を用いて以下の試験を行った。
 @試料の成分分析(XRD、XRF分析)、A試料の性質分析(NAG試験、NAPP値の測定)、Bカラム試験(カラムに試料を充填し、上部から水を注ぎ、ライトの照射による乾燥という現場を模した湿潤・乾燥サイクルを繰り返し行い、カラム下部から流出した水のpHおよびCa2+、Mg2+、SO42-濃度を測定)(図1参照)。

 なお、カラム試料の充填方法は図1に示すとおりであり、互層充填最下部NAF層については、上層からの地圧によって圧密される現場の状況を考慮し、最下部NAF層を圧密充填した場合についても検討を行った。

3. 結果および考察

 各試験(@〜B)によって得られた結果をまとめると以下の通りである。
 @すべての岩石試料にAMDの原因物質とされているPyriteを含有しており、Q10は酸の緩衝作用を持つSideriteを含有している。
 A表1に示すように、NAPP値の測定結果よりQ10は緩衝作用を持ち、T3はT4に比べ酸性化度が高い。
 BPAF充填割合が20%の場合、NAF/PAF互層ではNAF/PAF 2層よりわずかにAMD抑制効果が低減することや、NAF/PAF圧密互層が最もAMD抑制効果を示すことが分かった(図2参照)。

 また、PAF充填割合が40%の場合では、NAF/PAF圧密互層においてのみpHが6以上を示し、AMD抑制効果が認められた。廃石試料のNAPP値に従えば、AMD抑制効果が得られるPAF充填割合の上限が約35%であることから、NAF/PAF圧密互層のAMD抑制効果がNAF/PAF混合層のそれより若干大きい。

 以上の結果および廃石の埋め戻し作業性の観点から判断すると、NAF/PAF廃石を用いた互層カバーシステムは有用であると考えられる。

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