推進工法での掘進機構の相違による周辺地山への影響


 岩盤・開発機械システム工学研究室 4年 平石 望


 
1. はじめに

 推進工法は、「発進・到達立坑間において工場で製造された推進管の先端に掘進機・先導体又は刃口を取り付け、ジャッキ推進力等によって管を地中に圧入して管渠を埋設する工法である。」と定義され、交通量の多い道路または地下埋設物の輻湊した道路で地上からの掘削が困難な場合等に採用されるため、既設都市ライフライン構造物周辺での施工が多い推進工法は、これらの既設周辺構造物に対して、できる限り施工の影響を抑制する必要がある。本研究では、推進工法における各種掘進機構に着目し、これらの相違による周辺地山への影響について種々検討を行った。



2. 解析方法および解析モデル

 推進工法の相違により地山掘削挙動が異なることは明白であるにも関わらず、これまで掘進機構の相違による周辺地山への影響に関しては十分に把握されていない。この問題を解決するために3次元有限要素解析を行った。本研究では、刃口、泥土圧および泥水式推進工法の切羽ならびにテールボイドについて、それぞれの特徴を満足するようなモデル化を試みた。
 なお、数値解析には3次元応力解析ソフト3D-σを用い、弾性解析による検討を行った。図1に3種類の工法における解析モデルの概要を示す。


3. 結果および考察

 図2に解析結果の一例を示す。この図は土被りが3mで、立坑から10m掘削進行した場合の地表面変形量を示す。なお、図中の横軸は立坑からの距離を、縦軸は地表面変形量を表し、正が隆起を意味している。
 また、立坑から2.5mまでは坑口の影響があるため、データを掲載していない。
 
  この図より、まず刃口推進工法では、推進開始から顕著に地表面の沈下が始まっていることが伺える。一方、泥土圧式および泥水式ともに掘進機前方から地表面が隆起している。また、推進がある程度進行した場所の沈下量は、刃口が最も大きく、次いで泥土圧式、泥水式の順になっていることが判る。これは、刃口の場合、無支保領域が存在するため、切羽前方領域ならびにその上部を支持していないためである。また、掘進機通過後は、泥水式の沈下量が泥土圧式のそれに比して小さい。これは泥土圧式では掘進機通過後に土被りに対抗する荷重が作用していないのに対し、泥水式の場合テールボイドが形成され、内部が加圧状態であるためである。このことから、泥水式は切羽およびテールボイドを的確に加圧することにより沈下量を効果的に制御できることが分かる。
 

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