Mae Moh炭鉱におけるハイウォールマイニングシステムの
適用に関する研究


 岩盤・開発機械システム工学研究室 4年 濱中 晃弘


 
1. はじめに
 Mae Moh炭鉱は、タイ北部に位置する露天掘り石炭鉱山である。褐炭を生産しており、その年間生産量は約1,500万トン(2008年)でタイ国内最大の石炭鉱山である。現在の採掘ピットは、南北約7km、東西約4km、深さ270mにも及んでいるが、地山が軟弱でかつ、断層・不連続面が多数存在していることから、大規模な斜面崩壊がしばしば発生している。そのため、ハイウォールを当初の計画よりも緩傾斜で形成したり、断層および不連続面に沿った大規模な地滑り発生の懸念から、断層の手前200m〜300mの地山を残してハイウォールを形成するなど、今後採掘の深部化に伴い大量の石炭が未採掘のままハイウォール周辺に残されることとなる。
 そこで、本研究ではハイウォール周辺に残される大量の未採掘石炭を、斜面の安定性を確保しつつ最大限回収する有効な手法として、ハイウォールマイニングシステムの導入を提案し、数値解析により当鉱山における本システムの適用可否について種々検討した。



2. 解析方法
 本研究では、三次元有限差分法解析プログラムFLAC3Dを用いた。図1に解析モデルを示す。なお、本モデルは研究対象区域の地質状態を模したものである。破壊条件にはMohr-Coulombの破壊基準を適用した。
 本解析では、ハイウォールからの掘進距離、ピラー間隔等を変化させた場合の採掘空洞、斜面および断層周辺の地山挙動とその安定性について種々検討した。


3. 解析結果および考察
 解析結果の一例として、図2に炭層に3m×3mの矩形の採掘空洞を幅1.5mのピラーを残しながら、断層の手前150m及び50mまで掘進した時の断層周辺の地山の挙動を示す。
 なお、図中の矢印は変位ベクトルを示す。これらの図より、掘進切羽が断層の手前50mまで近づくと、断層周辺の変位量が増大し始め、採掘の影響が断層周辺地山の安定性に影響を及ぼし始めることがわかる。
 従って、断層と採掘区域との間に適切な緩衝区域を設定することにより、ハイウォールマイニングシステムによる安全な採炭が可能である。

4. まとめ

 本研究結果から、採掘区域と断層との間に適切な緩衝区域を設けることにより、断層および不連続面に起因する斜面の安定性を損なうことなく、ハイウォール周辺に残された石炭を安全に採掘できることが明らかになった。
 また、採掘地山が軟弱なことから、適切なピラー幅を設定するだけでなく、採掘跡を充填しながら採炭を行うことで、採掘空洞周辺地山の安定性が改善され、石炭実収率の向上も可能となる。
 

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