フライアッシュセメントを用いた震災時のガス漏洩抑制瞬結材の開発

 岩盤・開発機械システム工学研究室 4年  塩谷 道

1.はじめに
 トンネル覆工への空隙充填材としては、一般にモルタルが利用されているが、これの硬化にはある程度の時間を要するため、震災により破損したガス管からの漏洩防止に関わる注入のような充填の迅速性が求められる場合には、セメントに珪酸塩溶液を混合した薬液を用いて硬化時間の短縮が図られている。しかし、現実には十分な成果が得られていないという報告も少なくない。
 そこで、上述のような充填の迅速性を要求される瞬結材の開発を行うために、本研究では、フライアッシュセメントに珪酸塩溶液を混合させ、ゲルタイム30秒以内の瞬結材の開発を目指して種々検討した。


2.瞬結材が具備すべき条件
 充填の迅速性が求められるライフライン等の補修に関わる瞬結材としては、ゲルタイムが小さいこと、かつ充填が確実に行われることが必須の条件である。
 なお、ゲルタイムは溶液を混合して流動性を失うまでの時間であり、この値が大きいとゲル化するまでの時間が長いことを意味する。市販の瞬結材とモルタルを混合させた場合のゲルタイムは80〜120秒であり、またモルタルの水セメント比が大きい場合にはブリージングにより体積減少が認められることから、市販の材料では瞬結材として具備する条件を十分には満足していないのが実状である。


3.フライアッシュセメントを用いた瞬結材の開発
 薬液注入工法に用いられる瞬結材は、珪酸塩溶液が主成分であるA材とモルタルが主成分であるB材を混合してゲル化させ、硬化させることにより迅速性のある空隙充填が確保できる。
 そこで、本研究では、まずB材のモルタルの一部、あるいは全部をフライアッシュに代替させた場合の瞬結材の機能保持の可否を検討したが、何れの場合にも完全にガスを遮断できる瞬結材の作成が困難であった。
 次に、瞬結材の機能を満足させるために、セメントの吹き付け工事に一般的に使用される市販の再乳化型付着剤を混合させて遮蔽性の向上を試みた。この付着剤を使用する場合、混合時に発生する泡ならびに流動性の低下を抑制するために、消泡剤および分散剤を併せて添加した。その結果、圧着強度が極めて小さくかつゲルタイムも所定の値を満足しておらず、養生した試料には目視できる空隙も多数認められたため、遮蔽機能も有していないことが分かった。
 そこで、この問題を解決するためにさらに膨張剤の添加を試みた。その配合例を表1に示す。膨張剤には、セメントモルタルの収縮抑制に用いられる市販材料を適用し、ゲルタイムならびに圧着強度を測定した。その結果、表2より、ゲルタイムが30秒程度となり、圧着強度も大幅に向上した。さらに、アクリルパイプモールドで養生した試料の上部から水を注入したところ、72時間経過後でも養生試料上部から目視で1〜3mm程度しか浸潤しなかったことから、遮蔽性も具備した材料が開発できた。



 もどる