天掘り石炭鉱山におけるAMD問題とその抑制システムに関する研究

 岩盤・開発機械システム工学研究室 4年 迫田 治樹


1. はじめに

 石炭需要の増大に伴って、インドネシアでの炭鉱の開発は近年増加し、それに伴って環境問題に対する関心も非常に高くなり、炭鉱開発におけるリハビリテーションの必要性が増大している。現在、同国での炭鉱開発に伴うリハビリテーションで最も問題視されているのは、酸性鉱山廃水(Acid Mine Drainage;以下AMD)問題である。
 そこで、本研究ではインドネシアKPC鉱山を研究対象とし、当鉱山ダンピングエリアにおけるAMD発生状況の調査および分析を行うとともに、廃石条件および性質に応じた適切なAMD抑制システムの検討を行った。

2.AMD発生状況調査ならびに各種試験概要
 当鉱山のダンピングエリアにおけるAMD発生状況を調査・分析するため、まずPit J (埋め戻し後2年)およびSang (埋め戻し後10年) エリアから上部の2mの試料をそれぞれ採取した後、地表から深さ20cmごとに分け、XRD・XRF分析、NAG試験、paste pH・paste EC試験、ANC試験を行った。
 その結果、Pit JおよびSangの試料共々、AMD発生の原因物質とされるPyriteを含んでおり、廃石をPotentially Acid Forming(PAF)とNon Acid Forming(NAF)に分類すると、PAF廃石の割合が高いことが分かった。さらに、堆積廃石の酸化反応について、2年後は地表付近しか進行が認められなかったが、10年後は地表から約1.5m深までその進行が認められた。これは試料中の中和能力を有する成分による緩衝作用が考えられる。
 しかし、当鉱山のダンピングエリアでは時間の経過とともにAMD発生が不可避であり、当対象ピットにおいてAMD抑制システムの導入の必要性が明らかとなった。

3.カバーシステムを用いたAMD抑制システム
KPC鉱山ではダンピングサイトにおけるAMD抑制対策として、次の2種類 のNAGタイプ別埋め戻しによるカバーシステムが検討され、実行に移されている。すなわち、@NAF廃石をカバー材に用いる。ANAF廃石と共に粘土をカバー材として用いる(図2参照)。
 研究対象とした採掘区画では、上述の調査結果からNAF廃石が少ないため、後者の方法が適していると考えられる。そこで、次にカバー材の検討を行った。
 カバー材として粘土のみを用いる場合にはそのコストが問題と考えられるため、本研究ではフライアッシュ(以下FA)を粘土の代替として用いるカバーシステムの適性可否について検討を行い、従来に比べ安価なAMD抑制システムの開発を試みた。



4.カバー材の検討と試験概要
カバー材の適応性の検討は、粘土であるベントナイト(以下BN)及びFAを用い、透水試験を行った。                        
 透水試験の結果を表1に示す。土木工学的には1.0×10-5(cm/s)で不透水層と見なすことができ、@・Aの試料はその基準を満足しているため、カバー材として有効であると考えられる。
 しかし、Bの試料は基準値を上回る透水係数であるため、カバー材として有効でないといえる。@・Aの試料を比較すると、コスト面で優れているAの試料をカバー材として用いるのが適切だと思われる。またBN+FA層をダンピングエリアの最上部へ被覆することでNAFを有効活用することができる。



 もどる