節理卓越型石灰石鉱山における最適発破規格に関する研究

 岩盤・開発機械システム工学研究室 4年 射手矢 陽


1. はじめに

 発破により生じる起砕物の粒径は、発破規格のみならず岩盤状態、すなわち岩盤の強度や岩盤内亀裂、地質状態など様々な要因に依存する。特に、石灰石鉱山の稼行石灰石には岩盤内亀裂が卓越しているため、これによる発破効果への影響が顕著に認められる。本研究で対象とする石灰石鉱山では岩盤内亀裂が卓越し、粘土等の挟みも多く、その上岩盤自体も脆弱なため、当鉱山が求める粒度よりも小さな起砕物が大量に得られている。また、現在の発破規格では十分な発破効果が得られておらず、発破後も油圧ショベルによる切羽から起砕物を掻き出しながらの積込作業となっており、採掘コスト・時間・重機への負担増、さらに重機の掻き出し作業に伴う起砕物の細粒化という問題を抱えている。
 そこで本研究では、上記問題を解決するため発破効果を改善すべく、当鉱山において各発破規格を変更して試験発破を試み、当鉱山における最適な発破規格設計ガイドライン構築のための基礎的な知見を得ることを目的とした。


2. 調査項目および調査方法
 初めに現状把握のため、現発破規格での試験発破を行った後、最小抵抗線長、孔間隔、装薬量等の各種発破規格を変更して試験発破を行い、両試験の比較により各発破規格が発破効果に及ぼす影響ならびのその改善効果について種々検討した。
 図1に調査工程の概要を示す。まず、発破孔および発破孔後方に穿孔された観察孔において、ボアホールカメラを用いて発破前の岩盤内亀裂を観察・記録し、岩盤内の亀裂状態を評価した。発破時には、デジタルビデオカメラにて切羽正面および側面から切羽の様子を撮影した。次に、発破起砕物をデジタルカメラで撮影し、その画像をもとに粒度分布解析ソフトSplit-Desktopにより起砕物の粒度分布を求めた。最後に、観察孔の観察を再度行い、発破前後における岩盤内亀裂の数量変化あるいは潜在亀裂の開口等から、切羽後方への影響についても検討した。さらに、岩石の力学的特性値の発破効果に及ぼす影響について検討するため、各切羽の起砕物から岩石試料を採取し、各種力学的特性試験を行った。


3. 結果及びまとめ

一連の試験発破の結果から、最小抵抗線ならびに孔間隔を短くすることで、起砕物粒度および地山の挙動等に大きな改善が認められた。改善効果の一例として、図2に最小抵抗線を変化させた時の起砕物の粒度分布を示す。一方、装薬量を増やすだけでは改善は認められず、火薬のエネルギーが効果的に消費されていないだけでなく、発破孔列から後方への過度の影響から、次の切羽形成に支障をきたす等、悪影響が懸念されることがわかった。
 今後、周辺環境へのインパクトを考える上で発破振動および騒音についても計測および検討を行う必要がある。また、当鉱山における起砕物の粒度制御ならびに採掘効率の改善を図るためには、発破効果のみならず重機による積込・運搬状況も考慮した総合的な検討が必要である。




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