低周波音圧計を利用した道路面直下の空洞調査手法に関する研究

岩盤・開発機械システム工学研究室 4年 岩佐 高利

1.    はじめに
 わが国における地下インフラ整備は1960年代以降急速に進み、供用されている下水道管渠のみでも現在約37万kmに達している。しかし、敷設してから 50年を経過した管渠は既に8,000kmを越え、今後益々老朽管が増大することが予想される。また、これらの老朽管が原因で道路陥没事故が年々増加する 傾向にあり、H17年度には約6,600箇所で陥没事故が発生したと報告されている。このような事故は、地下に埋設された管渠やその周辺に形成された空洞 が原因である場合が多いが、これらを精度良くかつ簡便に行う手法が確立されていないのが実状である。そこで本研究では、事故原因となる空洞の調査を非開削 により実施する手法として低周波音測定装置を取り挙げ、その有用性について種々検討した。

2.    低周波音測定装置について
 低周波音測定装置は、構造物内部の空洞やひび割れ等による劣化、損傷レベルを判断する装置であり、一定の打撃を加えた時に発生する音波をセンサで計測 し、その周波数帯別の音圧を基に空洞の有無や大きさ等が判断される。なお、空洞などが存在する箇所における打撃を与えた場合には、以下のような音圧の変化 が観測される。
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 可聴帯域の音が主に空洞部により共振し、 100Hz、1kHzの音圧値が上昇する。
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 主にゆるみの多い部位により、超低周波音が発 生し、10Hzの音圧値が上昇。
 したがって、地中レーダーの周波数帯域よりも極めて小さな周波数帯で判断できるため、発生する音波の減衰が小さいという特徴を有している。

3.    試験概要および結果
 空洞の調査を非開削により実施する手法として低周波音測定装置が有用であるか否かについて検討するために、予備実験と現場実験を実施した。予備実験で は、予め準備した空洞を把握する上で必要な調査方法についての検討ならびに空洞の有無による音圧値の相違について調査した。予備実験の一例として、図1お よび図2に空洞モデル作製前後の音圧値の相違結果について示す。なお、空洞は図2の波線で示した箇所である。これらの図より、空洞が存在する場合には音圧 が高くなることが分かることが分かる。したがって、今回のように空洞以外の異物が存在しない場合には、低周波音測定装置を用いて空洞の有無を探査すること は可能である。




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