露天掘り鉱山におけるダンピングサイトの安全性に関する研究

岩盤・開発機械システム工学研究室 4年 寺田慶二

1. はじめに

 日本は世界最大の石炭輸入国であり、主要な輸入先のひとつがインドネシアである。現在、インドネシアの石炭生産量の99%は露天掘りにより採掘されてい る。しかし、露天採掘では必然的に表土除去、剥土、廃石など周辺環境に大きな影響を与える。そのため、採掘跡地の埋め戻しあるいは環境修復(リハビリテー ション)は、終掘後の周辺環境への影響を考える上でも非常に重要と言える。
 インドネシアの露天掘り石炭鉱山では、下盤が軟弱なダンピングサイトにおいて、しばしば盛土の滑り崩壊さらには大規模な地すべりを起こす事故が発生して いる。
そこで本研究では、軟弱下盤のダンピングサイトの安定性に及ぼす影響について検討するとともに、軟弱下盤の改良も考慮したダンピングサイトの設計指針確立 のための基礎的な知見を得るために、2次元有限要素解析により種々検討した。

2. 解析概要

 本研究では、二次元有限要素解析コードPhase²を用いて、軟弱下盤を有するダンピングサイトにおける斜面の安定性について検討した。図1に解析モデ ルを示す。破壊条件として、Mohr-Coulombの破壊基準を適用した。表1に解析に用いた岩石の各種力学的パラメータを示す。なお、これらの値は現 場で採取した試料を力学試験に供した結果を用いた。


3. 解析結果および考察

 図2に解析結果の一例として、斜面の傾斜が25度、盛土の高さが50mで、下盤に(a)軟弱層が存在しない場合と(b)軟弱層が存在する場合の解析結果 を示す。ここで、図中のコンター分布は安全率を表し、×印はせん断破壊、○印は引張破壊した要素を表す。これらの図より、ダンピングサイト下盤に軟弱層が 存在する場合、法尻付近にせん断破壊の発生が顕著に認められることから、斜面の安定性が著しく損なわれ斜面崩壊の危険性が高いことがわかる。さらに、法尻 付近から盛土上部に向かって安全率の低い領域が拡がっていることから、この部分に沿って盛土表面まで亀裂が進展すれば、大規模な地すべりに至る可能性も懸 念される。また、地すべりに至らなくても、進展した亀裂に沿って雨水が盛土内部まで浸透し、酸性水の発生要因ともなりうる。以上のことから、軟弱下盤を有 する場合には、盛土の高さや斜面の角度を小さくする等ダンピングサイトの設計変更、あるいは下盤の改良等の対策が必要と考える。


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