Rozna鉱山における岩盤の安定性に関する数値解析的検討

岩盤・開発機械システム工学研究室 4年 谷口 和也


1. はじめに

 チェコ共和国東部に位置するRozna鉱山(ウラン鉱山)では、現在の採掘レベルが地表から1,200mであるが、今後さらなる開発の深部化が検討され ている。しかしながら、採掘深度が大きくなるにつれて地圧が増大し、天盤崩落、山はね、盤膨れ等の地山制御問題の発生が懸念されている。そこで本研究で は、FLAC3Dを用いた3次元弾性解析により、当鉱山における切羽の深部化に伴う採掘空洞の安定性評価ならびに新たな支保システムの導入等について種々 検討を行った。

2. 解析概要

 図1に解析モデルを示す。本モデルは、当鉱山の1,200m深及び1,500m深における下向充填採掘法による採掘状況を模したものである。ウラン鉱脈 は傾斜60°、幅15mであり、鉱脈に沿って掘削する主要坑道、斜坑、及び切り上がり坑道の幅は3m、高さは3mである。また、初期状態において鉛直方向 に作用する応力は土被り圧のみとし、側圧係数を1とした。本解析では、採掘深度の影響に加え適切な充填材の強度についても検討した。


3. 解析結果および考察

 図2に解析結果の一例として、斜面の傾斜が25度、盛土の高さが50mで、下盤に(a)軟弱層が存在しない場合と(b)軟弱層が存在する場合の解析結果 を示す。ここで、図中のコンター分布は安全率を表し、×印はせん断破壊、○印は引張破壊した要素を表す。これらの図より、ダンピングサイト下盤に軟弱層が 存在する場合、法尻付近にせん断破壊の発生が顕著に認められることから、斜面の安定性が著しく損なわれ斜面崩壊の危険性が高いことがわかる。さらに、法尻 付近から盛土上部に向かって安全率の低い領域が拡がっていることから、この部分に沿って盛土表面まで亀裂が進展すれば、大規模な地すべりに至る可能性も懸 念される。また、地すべりに至らなくても、進展した亀裂に沿って雨水が盛土内部まで浸透し、酸性水の発生要因ともなりうる。以上のことから、軟弱下盤を有 する場合には、盛土の高さや斜面の角度を小さくする等ダンピングサイトの設計変更、あるいは下盤の改良等の対策が必要と考える。

4. まとめ

 本研究より、以下のことが明らかとなった。
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 現在の採掘レベルである1,200m深と比べて、 1,500m深での採掘では、採掘空洞周辺岩盤の変位  量が著しく増大することから、現支保システムの補強あるいは採掘計画の設計変更など総合的な地山制御対策が必要と考えられる。
A   
 強度の大きな充填材を用いることで、採掘空洞周辺の安定 性を改善できる。



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