夾炭層岩石の強度およびスレーキング特性に関する研究 |
岩盤・開発機械システム工学研究室 4年 三島 寛子 |
1.
はじめに
石炭需要の増大に伴う石炭鉱山の開発は近年増加している。それに伴い、安
全性・生産性・環境対策など様々な課題が発生してきている。これらの中で夾炭層
岩石の強度およびスレーキング特性は、採掘中の斜面の安定性に、またズリの処理に関しての堆積場のARD(酸性鉱山排水)問題を含めた斜面の安定性に密接
に関係する。
以上の意味から本研究は、インドネシアのKPC鉱山(Kaltim
Prima
Coal)で採取された夾炭層岩石を試料として、粘土鉱物の成分調査、スレーキング試験、丸棒圧入試験を行い、現在はARD問題の解決を主目的として
NAG試験から考案されたズリの処理方法に対して、強度的特性の面からの検討を加えてズリのより最適な処理方法を考察したものである。
2.
試料・実験
実験に用いた岩石試料はKPC鉱山から採取されたもので、現地で実施された
NAG試験により4つのType1、Type2、Type3aおよびType4
に分類されていた。なお、Type1と2はNAF(Non-acid
Forming)、Type3a、3bおよび4はPAF(Potentially-acid
Forming)とされる。実施した実験は、@試料分析(XRD試験、XRF試験)、Aスレーキングに関する試験(メチレンブルー吸着試験、スレーキング
インデックス試験)、B強度に関する試験(室内乾燥、湿潤状態における丸棒圧入試験)である。
3.
結果とまとめ
各実験により得られた結果を要約すると以下のようである。@;全Typeの試料岩石に、スレーキング特性に影響を顕著に及ぼすとされているスメクタイト
が含有されている。A;同じピットから採取された試料でも様々なスレーキング特性を持つが、一部では激しいスレーキングを生じる。B;風乾の一軸圧縮強度
はいずれの試料もかなり小さく軟岩の部類に入る。また、湿潤状態ではさらに1/2〜1/3に低下する。 これらの結果から、ズリの堆積処分問題はNAG試験結果のみでなくスレー
キング現象や強度面をも考慮して対処しなければならないと思われる。すなわち、
現在は図1のように、ARD問題からPAFを下部に、その上にカバー材としてNAFを堆積しているが、NAFであってもスレーキングし易いもの、強度の小
さいものでは浸食や崩壊が起こり、カバー材としての役割が失われる恐れがある。降雨からの水分の浸透を避けるためには表面をコンクリート系のもので固め
る、あるいは防水シート等を被せるなどの工夫が必要であろう。
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