推進工法における滑材の基礎特性に関する研究
岩盤・開発機械システム工学研究室  4年 菊谷 比呂至

1.はじめに
 推進工法は、図1のように発進立坑から、掘進機とそれ
に追従する推進管が元押しジャッキの推力によって地山に
圧入される非開削管渠埋設工法のひとつである。掘進機先
端の切羽では、掘削地山と送泥材を攪拌した高濃度泥水が
加圧充填され、切羽前方の土圧に対抗することで切羽の安
定性が確保される。また、推進管と地山の間に設けられる
管周ボイドには地山と推進管との摩擦抵抗を減少させ、同
時に地山の緩みを防止する滑材を注入することで、低推力
かつ長距離の施工を可能としている。
                                                                                           図1 推進工法の概要
2.滑材の役割および本研究の目的
 管周ボイドには、滑材と称する充填材が充填されるのが一般的である。通常この管周ボイドの大きさは、工法により異なるが、直線推進の場合10〜25mm 程度である。前述のように使用される滑材は、地山と推進管との摩擦抵抗を減少させると同時に地山の緩みを防止するものでなければならない。この滑材として は、さまざまな施工及び土質条件に対応できるように種々の新材料が開発され、試用されているが、その適用性の優劣に関しては未だ検討が十分ではない。本研 究では、現場で一般的に用いられている可塑性滑材、粒状滑材および開発段階であるフライアッシュ界面活性剤混合滑材(以下FAボイド)の基礎的特性を把握 するために以下の試験を実施した。なお、可塑性滑材は珪酸ナトリウムを主材とした二液混合型であり、粒状滑材は高吸水性ポリマーを主成分とするものであ る。

3.試験項目

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 浸透試験:管周ボイド内に充填された可塑性滑材からの地 盤へ浸透する離脱水の離脱状況を把握することにより、注入後の経過時間に伴う強度劣化の程度を把握することができると考えられる。そこで、可塑性滑材の加 圧試験を実施し、加圧条件下で水分が分離する程度を評価することにより、可塑性滑材の注入後の経過時間に伴う劣化について検討した。
A
 回転摩擦計による摩擦係数の計測:管周ボイド内に滑材を 注入することで、地山と推進管体接触時における摩擦抵抗を減少させる効果が期待される。したがって、作用する推進管外周面の摩擦抵抗は、摩擦係数が小さい ほど推進力が小さくなることから、滑材として優れた材料となる。そこで、3種類の滑材について回転摩擦計による摩擦係数を計測し、どの滑材が最も摩擦抵抗 を低減できるかについて検討した。
B
 粘性試験:滑材はグラウト孔から圧送により管周ボイドに 注入充填されるため、滑材の圧送性の良否は、施工性をはじめ管周ボイドの安全性に寄与すると考えられる。そこで、滑材の圧送性について検討するために、B 型粘度計により粘性試験を行った。
4.まとめ
 FAボイドは、他の滑材と比較して経過時間に伴う劣化が少なく、長期的に摩擦係数が小さい値で維持することから他の滑材よりも優れていることが分かっ た。しかし、圧送性については他の滑材と比較して粘度が高いことから、材料の圧送性についてはこれまでの滑材より劣ることが分かった。

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