フライアッシュセメント界面活性剤混合材料の
空洞充填材としての適用性に関する研究
岩盤・開発機械システム工学 研究室 4年 中村 拓史

1.はじめに
 石炭火力発電所から発生するフライアッシュは、今後さらに増大することが予測される。このため、フライアッシュの有効利用という観点から、ライフライン 埋設工法の充填材やダムサイトのグラウト後の空隙への充填材としてのフライアッシュセメントの適用可否について検討されている。
 現在、フライアッシュセメントを空洞充填材として適用する場合、ブリージングおよび流動性を制御するために各種添加剤が用いられるが、これらを用いても ブリージングは完全には制御できない。また、地下水などが存在する場所に低濃度のフライアッシュセメントを注入する場合には、水中に飛散する現象も認めら れる。そこで、これらの問題点を解決するために、ビスコトップ(以下、VT)という界面活性剤が開発された。
そこで本研究では、フライアッシュセメント界面活性剤混合材料・ビスコトップの空洞充填材としての適用性について検討するために、フライアッシュセメント (以下、FC)とフライアッシュセメント界面活性剤混合材料(以下、VTFC)を用いて種々の実験を行い、両者の比較を行った。

2.試験項目および試験結果
空洞充填材としての機能を発揮するためには、@:充填性に優れ、注入後余掘り箇所から周辺地山への流出が少ない、A:流動性が良くかつブリージングが少な く、ポンプ圧送性に優れている、B:材料分離が少なく、均一な固結強度が得られる、C:固化後の体積減少が少ない、という条件を満足する必要がある。この ような条件について検討するために、@粘性試験、Aブリージング試験、B強度試験、CpHおよび導電率試験、の4項目の試験を行った。得られた結果を以下 に示す。

1) VTによる増粘効果により、VTFCはFCより極端に高い 粘性を示した。
2) FCは短時間でのブリージングを示すが、VTFCは材料分 離抵抗性を有し、長時間経過してもブリージングはほとんど認められなかった。
3) VTFCは、FCと比較すると空隙率の上昇に伴う水密性の 低下により強度が低減した。
4) FCVTはCa(OH) 2の電解が促進され、pH、導電率ともFCよりも高い値を示した。

3.まとめ
1) VTFCはVTの増粘効果により高粘度となるが、チキソト ロピー性を有するためにポンプ圧送時に大きな送圧を作用させることで長距離輸送が可能になる。 また、ブリージングが抑制されるため、圧送中にポンプやホースに閉塞する可能性も極めて低い。したがって、ポンプ圧送性に関してはVTFCの優位性が認め られる。
2) VTFCは固化収縮がほとんど認められないため、圧送量に 近い容積を確保することができる。
3) VTFCの充填直後はゲル状を呈し、高い逸水防止性と水中 不分離性を示すことから、空洞充填中に周辺地盤に逸脱することや、地下水などに希薄されることがない。
4) VTFCは固化強度が小さいため、高強度を要する施工には 適さない。
5) VTFCは固化すると多孔質構造を呈するため、通水するこ とで水和反応の進行によりOH−が流出し、周辺環境への影響が懸念される。
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