圧入推進工法における最適先端形状に関する研究
岩盤・開発機械システム工学 研究室 4年  相本 貴義

1.はじめに
 圧入推進工法とは、立坑から元押しジャッキを用いて掘削排土を行わずに地中に推進管を推し進めていく工法であるので、掘削排土を伴う掘削推進工法よりも 高速推進が可能である。圧入推進工法は、推進時に推進管先端前面に前面抵抗が、推進管の周辺には摩擦抵抗が作用する。この摩擦抵抗は推進管周辺に滑材を注 入することにより制御することができるが、前面抵抗は低減することができない。また、前面抵抗は推進管口径に比例して増大するため、口径が増大すると元押 しジャッキの推進力を上回り施工できない場合もある。そこで、このような問題を解決するために、圧入工程を二工程に分け、まず一工程目に所定の推進管より も小さい口径でリード管を圧入し、二工程目で特殊治具を用いて所定の口径の推進管を圧入することにより、前面抵抗を制御する工法が考案されている。本研究 では、二工程拡径圧入推進工法において、推進力を左右する前面抵抗を低減するために、二工程目推進時の特殊治具の最適先端形状に関する検討を実験により 行った。

2.実験方法
二工程拡径圧入推進工法を模した実験は、一工程
目として直径119.7mm、長さ2,000mmのリード
管を元押しジャッキから圧入した後、二工程目とし
て拡径用特殊治具が取り付けられた直径177.8mm、
長さ2,000mmの推進管を圧入することにより行っ
た。実験土槽の大きさは2,000×2,000×2,300mm
であり、土槽内に山砂を充填し、N値が10程度に
なるように転圧した。なお、土被りは1,800mmで
あり、リード管および推進管は塩ビ管である。
 二工程目の推進時の特殊治具先端形状について検討するために、先端角度が30,60,90,120,150および180°の特殊治具を取り付け、元押し ジャッキに取り付けられたロードセルにより推進力を、先導管および特殊治具に取り付けた土圧計により土圧を測定した。
3.まとめ
 推進管を圧入すると、一二工程とも推進方向に対して斜め上方に土のすべり線が発生する。このすべり線に沿って地山が斜め上方 に移動するので、すべり線の接線方向に特殊治具の面が向いていれば、圧入しやすい最適な先端形状だと推測される。すなわち、最適な先端角度を決定するため には、すべり線の角度を把握する必要がある。そこで、地山の微小範囲内に推進力と土被り圧のみが作用し、内部摩擦説に従ってすべり線が発生すると仮定した 場合、土被り荷重、内部摩擦角、推進力を各々変化させて計算した結果、土被り圧や内部摩擦角が小さいほど、また推進力が大きいほど、すべり線の角度が小さ くなり、最適先端角度が大きくなることが分かった。
 実験の結果では、前面抵抗が最も小さくなる先端角度は120°付近であり、先と同様の計算をすると、ほぼ類似した結果が得られたが、実際の現場では土被 り圧や内部摩擦角、推進力が大きく変動するため、最適先端角度の決定にはこの点を留意する必要がある。
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