フライアッシュセメントを用いたグラウト材の充填性に関する 研究
岩盤・開発機械システム工学 研究室 4年  高橋 恵輔

1. はじめに
 グラウチングは、構造物の基礎となる土質地盤あるいは岩盤中の空隙を充填し、固密化、一体化、均一化することにより、地盤あるいは岩盤の透水性および力 学的特性を改良することを目的に実施される。グラウト材としては、低粘性、高流動性のセメントミルクが一般的に用いられるが、グラウト材の経費節減のため にこれの一部代替について検討する必要がある。そこで、着目した物質がフライアッシュ(石炭灰)である。現在、その約80%が有効利用されているが、残り は灰捨場に埋立て処分されている。しかし、石炭灰の発生量は、今後さらに増大することが確実視されているため、大規模な灰捨場の確保が困難となることが予 想される。また、地球規模の環境を考えた資源化という面でもフライアッシュの有効利用拡大は重要となっている。
 以上のような背景から、本研究ではフライアッシュセメントグラウト材を用いたグラウチングへの適用性について把握するために、原粉ならびに整粒されたフ ライアッシュを用いたフライアッシュセメントグラウトとポルトランドセメントグラウト材の粘性、流動特性ならびに注入実験を行い、地盤内での各グラウト材 の浸透・充填モデルを確立し、現場への適用性について種々検討した。

2. 注入実験
 実験は図1に示すように、一定の高さにあるタンク
からセルに充填したビーズにグラウトを注入するもの
である。セルは、円筒型ステンレス製のセル(内径5.2
cm、長さ69cm)であり、グラウトはセルの長さ方向に注入した。ビーズの粒径は3.96mm〜6.68mm、グラウトの種類は、水にセメントを混ぜた ポルトランドセメントグラウト、ポルトランドセメントの一部をフライアッシュ代替したフライアッシュセメントグラウト(JISU種と原粉の2種類)で、グ ラウトの配合は粉体水比CF/W=0.1とした。なお、CFはセメント・フライアッシュの混合重量、Wは水の重量である。
3. まとめ
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使用するグラウト材により間隙閉塞挙動が異なり、原粉フラ イアッシュセメントグラウトは団塊粒子及びその架橋作用の影響で流動性が低下し、JISU種フライアッシュセメントグラウトはボールベアリング作用により 流動性が上昇する。
A 流動性の観点で各グラウト材のグラウチングの実用性につい て考慮すると、
ポルトランドセメントグラウトは長時間かければ広範囲に密 に充填可能だが、短時間で狭い範囲の充填作業(例えば、地盤掘削壁面の崩壊や出水の激しいと予想される箇所)への注入には原粉フライアッシュセメントグラ ウトの方が適している。
ポルトランドセメントグラウトより非常に広範囲に充填可能 な高流動性を持つフライアッシュセメント(U種)は、グラウト材の濃度を濃くしても依然ポルトランドセメントよりは高流動性であるため、その実用性は極め て高い。
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