岩盤物性および挟み層が発破振動に及ぼす影響について

 岩盤・開発機械システム工学研究室 修士2年 佐々木孝之

 


1. はじめに

 発破作業は鉱山や土木の分野で重要な技術として古くから利用されてきた。最近は都市部の構造物解体にも適用が試みられるようになり、改めてその有用性が認識されつつある。しかしながら、発破作業は、法令によって火薬類の利用が制限されていることをはじめ、火薬類に対する危険な印象や振動・騒音・飛石など、他の工法よりも周辺環境に悪影響を及ぼす可能性が高いことが挙げられる。
 そこで本研究では、振動・騒音・飛石の中でも比較的広範囲に影響を及ぼす振動に着目し、周辺環境へのインパクトを評価し公共の安全を確保しながら発破作業を効率的に利用するために、振動の伝播特性を把握することを目的とした現場実験および解析を行った。すなわち、石灰石鉱山において発破振動の実測を行うとともに、有限要素法による数値シミュレーションを試み、各種岩盤物性値ならびに岩盤内に存在する挟み層が、爆源から遠方の地点に到達する発破振動にどのように影響を与えるかを種々検討した。なお、挟み層とは岩盤内に存在する異なる物性値を持つ泥質岩や粘土を想定したものである。

2. 現場計測および数値シミュレーションの概要
 2-1 現場計測
 図1に発破振動測定の概要図を示す。振動計測点は、発破孔列中央からベンチの起砕面に対して垂直となる方向に、発破孔から45m、75m、150m離れた地点とし、それぞれ振動加速度センサーBM1、BM2、BM3を設置した。

 2-2数値シミュレーション
 現場計測のデータを元に、2次元有限要素法解析ソフトLS-DYNAコードを用いて発破振動シミュレーションを行った。図2に解析モデルを示す。また、爆源部要素に実測値に適合するものとして式(1)で表わされる圧力関数を入力した。

    P(t)=0.057{exp(-100t)-exp(-500t)}(MPa)・・・(1)

 入力物性値は、現場で採取した試料を力学試験に供した結果を用いた。さらに、モデル中に挟み層を設け、この層の各種物性値が最大粒子速度(以下PPV)へ与える影響を種々検討した。なお、モデル中の観測点は現場計測におけるBM3と同じ位置と仮定した。

 
3. 結果およびまとめ
 本研究の結果から、岩盤のヤング率が発破振動の伝播特性に大きく影響を及ぼすことが明らかになった。
まず、図3に岩盤のヤング率とPPVの関係を示す。この図より岩盤のヤング率が大きくなるほど測点で観測されるPPVが小さくなることがわかる。また、図4に岩盤内に存在する厚さ10mの挟み層のヤング率と測点のPPVの関係をそれぞれ示す。この図からの挟み層の存在によりPPVの著しい減衰が認められ、挟み層のヤング率が周辺岩盤の値と同程度のときPPVが最大値を示し、その差異が大きいほど減衰度合いが大きいことがわかる。
 以上のことから、予め岩盤のヤング率ならびに粘土層や破砕帯等ヤング率の低い層の賦存状況を把握出来れば、より正確な発破振動の予測が可能であると考えられる。

 



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