インドネシア・露天採掘炭鉱における
傾斜炭層を含む斜面の安定性に関する数値解析的研究


 岩盤・開発機械システム工学研究室 修士2年 井上雅

 

  1. はじめに
 日本は世界最大の石炭輸入国であり、主要な輸入先のひとつがインドネシアである。現在、インドネシアにおける石炭生産量の99%以上は露天採掘によっている。露天採掘を行う際には、ピットを安定に保ちつつ安全に操業することが必須であるが、インドネシアでは、石炭層の上下や炭層間に存在する夾炭層岩石の性質により、ピット斜面の安定性が損なわれ崩壊する現象がしばしば見られる。また、多雨のため地下水位が高く斜面の不安定性に寄与している。
 そこで本研究では、上述の問題を抱えるインドネシア・南カリマンタンに位置するAdaro炭鉱において現地調査を行い、現場で採取した岩石試料の各種力学的特性値および現場計測データをもとに、現在から以後5年間の採掘計画に基づいて二次元有限要素解析を行い、採掘計画段階におけるピット斜面の安定性評価およびその改善策について種々検討を行った。


2.  数値解析方法
 本研究では、二次元有限要素解析コードPhase² ver6.0を用いて、Adaro炭鉱におけるピット斜面の安定性解析を行った。図1に解析モデルを示す。ここで黒色は石炭層、緑色は泥岩層、黄色は砂岩層、青線は地下水位をそれぞれ示す。ローウォールの傾斜は代表的な炭層傾斜と同様の24°とし、ハイウォールの傾斜はシングルベンチで40°、平均傾斜は30°以下とした。また、実際の操業を模した解析を行うため、ステップ解析を行った。側圧係数は1.0とした。岩盤は弾塑性体とし、その破壊はHoek-Brownの破壊基準に従うとした。表1に解析に用いた岩石の各種力学的パラメータを示す。なお、これらの値は、現場で採取した試料を力学試験に供した結果を基に定めた。
 本解析では、採掘の深部下に伴うピット斜面の安定性の変化について検討した。また、今回研究対象としたピット周辺では地下水位が高いため、当炭鉱では抜水処理の適用も検討されていたことから、ピット斜面の安定性に及ぼす地下水位の影響についても検討した。

  

1.   数値解析方法
 本研究では、二次元有限要素解析コードPhase² ver6.0を用いて、Adaro炭鉱におけるピット斜面の安定性解析を行った。図1に解析モデルを示す。ここで黒色は石炭層、緑色は泥岩層、黄色は砂岩層、青線は地下水位をそれぞれ示す。ローウォールの傾斜は代表的な炭層傾斜と同様の24°とし、ハイウォールの傾斜はシングルベンチで40°、平均傾斜は30°以下とした。また、実際の操業を模した解析を行うため、ステップ解析を行った。側圧係数は1.0とした。岩盤は弾塑性体とし、その破壊はHoek-Brownの破壊基準に従うとした。表1に解析に用いた岩石の各種力学的パラメータを示す。なお、これらの値は、現場で採取した試料を力学試験に供した結果を基に定めた。

 本解析では、採掘の深部下に伴うピット斜面の安定性の変化について検討した。また、今回研究対象としたピット周辺では地下水位が高いため、当炭鉱では抜水処理の適用も検討されていたことから、ピット斜面の安定性に及ぼす地下水位の影響についても検討した。


1. まとめ

(1)     採掘の深部化にともない、ピット斜面の安定性が著しく低下することがわかった。また、地下水による影響も顕著に表れた。

(2)     排水処理によりピット斜面の安定性の改善が認められたが、雨季には排水処理を施しても地下水位の上昇が懸念されるため、ピット斜面の設計変更についても検討が必要である。

(3)     ベンチの設置、平均傾斜を低くすることでピット斜面の安定性は改善できるが、大規模な斜面崩壊の危険性を考慮すれば、ベンチを設置する方が安全であると考える。



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