堆積軟岩のクリープ評価に関する実験的研究

岩盤・開発機械システム工学研究室 修士2年 瀬良田礼志
 
1.はじめに
 近年の地下岩盤利用の多様化から、構成する岩石の長期安定性評価や破 壊予知・予防方法の確立が求められ、その一環として岩盤の経時的挙動を把握すること を目的とした研究が数多く行われている。しかし、その多くが硬岩を対象としており、堆積型の軟岩の粘弾性や時間依存性に関する研究実施例は数少ない。さら に、高濃度放射性廃棄物の地層処分における研究対象岩盤としても、結晶質岩とともに堆積岩が挙げられている。そこで、本研究では、堆積型の軟岩を研究対象 とし、強度や変形特性の調査や破壊寿命の予測を行うためにクリープ試験を実施し、岩石の破壊挙動における粘弾性や時間依存性に関する検討を行った。

2.供試岩石および試験法
  供試岩石は、珪藻土、大谷石およびBerea砂岩の3種の堆積軟岩である。まず、これらの岩石を室温下で定ひずみ速度圧縮試験に供した。すなわち、4種の 見かけひずみ速度を設定し、封圧値はBerea砂岩:0, 5, 10, 15および30MPa、珪藻土:0, 1および2MPa、大谷石:0, 2, 5および10MPaとした。ひずみ計測には、Berea砂岩に対してはひずみゲージ、珪藻土および大谷石では実ひずみ算出法を用いた。なお、試験装置には MTS万能試験機(油圧サーボ式)を用いた。
  次に、Berea砂岩および珪藻土に対象岩石を絞り、クリープ試験を行った。試験に用いた装置はクリープ応力レベルにより重錘式クリープ試験機2機と上述 のMTS万能試験機とを使い分けた。なお、破壊が生じない場合は、約1ヶ月で実験を打ち切った。ひずみ計測には、Berea砂岩ではひずみゲージを用いた が、珪藻土ではLDT変位計により計測した。

3.結果と考察
定ひずみ速度試験結果から、大谷石およびBerea砂岩で封圧下におけ る圧縮強度の載荷速度依存性が認められた。また、ヤング率の載荷速度 依存性もほとん どの場合において確認することはできたが、Berea砂岩および大谷石の封圧5MPaにおいては、実ひずみ速度が増大するにつれてヤング率が低下するとい う結果が得られた。この原因として、応力‐ひずみ曲線において、実験開始後に弾性領域と思われる線形部分が認められず、常に上に凸の曲線であることが考え られる。この破壊挙動は、堆積軟岩の特徴である高い空隙率に起因するものと思われる。
  表1に、標準状態の珪藻土の室温大気圧下クリープ試験の条件および結果を示す。ここで「N」は破壊に至らなかったことを表す。この表に示すように、破壊寿 命に大きなバラツキが見られ、大久保らの提案しているコンプライアンス可変型構成方程式を用いた破壊寿命の予測値と実験値に一致が認められなかった。ま た、初期載荷速度を変化させた場合、Berea砂岩では初期載荷速度が大きいほど破壊寿命が短いという結果が得られたが、珪藻土ではこの傾向は認められな かった。クリープ試験では、微小なひずみを長期に亘り計測するためバラツキが大きいと言われているが、空隙率が高くなるほどこのバラツキがより増大すると 考えられる。


4.まとめ
  堆積軟岩を用いて定ひずみ速度試験およびクリープ試験を行った結果、定ひずみ速度試験から高空隙率の堆積軟岩では、低空隙率の岩石とは明らかに異なる挙動 が認められた。この結果、これまで一般的に用いられてきた50%接線ヤング率では、堆積軟岩の弾性係数として適切とは言えず、ヤング率の求め方および評価 についてさらなる検討が必要であることが示された。また、クリープ試験においても、空隙率の影響により岩石特有のバラツキが極めて大きいことから、従来の 構成方程式の適用が困難であることが分かった。さらに、クリープ試験における荷重の制御やひずみ計測方法も結果に大きく影響するため、今後さらなる検討が 必要であることが分かった。

もどる