フライアッシュのベントナイト代替物としての利用に関する研究

岩盤・開発機械システム工学研究室  修士2年 榎田 光一
1.はじめに
  石炭火力発電所から副次的に生産される大量の石炭灰の有効利用に関してこれまで様々な研究が行われてきた。しかし、その利用率は未だ約80%程度であり、 依然多くの石炭灰が未利用のまま灰捨て場に投棄処分されている。一方、廃棄量の増加に伴い、灰捨て場自体の確保も困難な状況になりつつある。このような背 景から、石炭灰の化学的、物理的特性を活かした更なる利用率の向上を図ることが急務である。
現在、高レベル放射性廃棄物の地層処分における人工的なバリアーとしてベントナイトを用いる構想があるが、良質のベントナイトを確保することは難しくなっ てきている。そこで、この緩衝材の一部としてフライアッシュを代替することができれば、ベントナイトの使用量を抑えるとともに、石炭灰の利用範囲の拡大を 図ることができる。このような観点から、本研究では石炭灰の中でも特にフライアッシュを取り挙げ、その緩衝材における一部代替物としての利用の可否につい て、各種の試験から検討した。

2.試料および試験方法
フライアッシュによるベントナイト代替物の高レベル放射性廃棄物の緩衝 材としての適用可否について、緩衝材の設計要件に基づき以下の試験を行った。
1. 強度試験・・・地盤に対する力学的緩衝性
2. 透水試験・・・不透水性の検証
3. 膨潤試験・・・自己シール性の検証
4. 熱伝導率試験・・・熱伝導率の相違の検証

今回使用した試料材料は、緩衝材標準試料の主原料となっているベントナイト(表中BN:クニゲルV1)、標準試料における一部代替物であるケイ砂(3 号、5号)およびフライアッシュ(表中FA:原粉、U種)である。表1に強度試験ならびに熱伝導率試験に供した供試体の材料配合比を示す。
表1 供試体配合比

 
3.試験結果
試験結果の概要を以下に示す。
@ 強度試験・・・図1に試験結果の一例を示す。フライアッシュおよびケイ 砂代替割合の増加に伴い強度が向上する傾向が見られたが、ケイ砂とフライアッシュの どちらで代替しても強度的な影響は認められなかった。また、緩衝材の設計要件について検討した結果、今回で行った代替比率の範囲では代替による強度的な問 題はなかった。
A 透水試験・・・ベントナイト単体試料と比較すると、ケイ砂代替試料の方 は止水性については若干劣るが、フライアッシュ代替試料の場合には十分な止水性を保持していることが確認された。
B 膨潤試験・・・膨潤性は主原料となるベントナイトの含有量のみに依存す ることが確認された。
C 熱伝導率試験・・・ベントナイト単体試料に比べ、 ケイ砂代替試料、フライアッシュ代替試料とも熱伝導率の増加が認められ、その増加量はケイ砂代替試料の方が大きかった。

4. まとめ
  本研究では、緩衝材における代替材としてのフライアッシュの適用性について、代替率や代替試料の違いから比較検討を行った。その結果、ベントナイト単体お よびケイ砂代替試料と比べ、フライアッシュでその一部を代替しても、緩衝材に求められている各種特性の大きな低下は認められず、また設計要件を満たしてい ることが判った。したがって、今回試験で用いた代替比率の範囲内ではフライアッシュによる一部代替が十分可能であると考えられる。なお、実用化には今後さ らに化学的な要素や長期安定性等を検討していく必要がある。

もどる