インドネシア露天掘り石炭鉱山における夾炭層岩石の力学特性とAMD問題

岩盤・開発機械システム工学研究室  修士2年 大屋 二郎

1.はじめに
  インドネシア・タンジュンエニム炭鉱では、ダンピングエリアからの排水の酸性水化が顕著となっているため、性鉱山排水(Acid Mine Drainage;AMD)問題が深刻化しておりAMDを抑制する適切な埋め戻し方法の検討が必要となっている。そのため、KPC鉱山で行われている AMD対策のひとつであるNAGタイプ別埋め戻し方法(図1)の採用が検討されているが、廃石のスレーキングによりNAG試験で分類されたNon Acid Forming(NAF)のPotentially Acid Forming(PAF)のカバー材としての役割を失う危険性が考えられる。
 以上のような背景より、本研究ではインドネシア・タンジュンエニム炭鉱におけるAMD問題および廃石のスレーキング特性に関する問題の抽出と対策を目的 として種々の検討を行った。

2.検討項目
・    鉱山排水のpH測定、排水中の重金属溶出量分析および堆積土砂中の重金属含有量分析による酸性水発生状況の把握
・    酸性水発生量の予測
・    夾炭層岩石のNAGタイプ別スレーキング特性および含水率による強度劣化特性を考慮したNAGタイプ別埋め戻し方法の検討
・    カラム試験によるフライアッシュによるAMD抑制効果の検討
・    フライアッシュをランニング材として用いた廃石堆積場斜面の安定性に関する数値解析的検討

3.まとめ
1. 排水のpH測定結果より、ピット内池では池内に流入した夾炭層岩石の堆 積土砂が発生源となり酸性水化が生じていることが明らかになった。また、タンジュン エニム炭鉱ピット3においては、採掘対象部より高標高部に降る降雨のピット内流入を削減することで、酸性水発生量を約55%低減することができることが分 かった。
2. ダンピングエリアからAMD発生が顕著に見られ、夾炭層岩石のNAGタ イプ分類結果よりPAF/NAF=1.6とPAFの多量の存在が確認されたことから、AMDを抑制する埋め戻し方法の検討が必要であることが分かった。
3. NAGタイプ別埋め戻し方法の適応を検討した結果、ほとんど廃石のス レーキング性は高く、特にNAF岩は初期の段階から著しいスレーキング現象を呈した。 さらに、含水率の増加に伴って強度劣化が生じることより、これらの相互作用によってさらなる細粒化、亀裂拡大が考えられ、NAGタイプ別埋め戻し方法は、 廃石の力学的特性の面からの考慮が必要であることが明らかになった。
4. カラム試験および数値解析的検討から、フライアッシュの効果をより発揮 するためには、黄鉄鉱を含有する廃石の上部にフライアッシュを配置する工法が優れて いることが分かった。また、フライアッシュを廃石堆積場ベンチ斜面のライニング材として用いた場合、フライアッシュの不透水性によって廃石のスレーキング 現象を低減させることを考慮すると、ライニング材によるベンチ斜面の安定性が向上することが分かった。


図1 NAG タイプ別埋め戻し方法
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