小口径推進工法における既設管の位置情報管理に関する研究
岩盤・開発機械システム工学研究室  修士2年 相本 貴義

1. はじめに
 我が国のライフライン整備は急速な勢いで普及を遂げており、ライフライン管渠の施工延長もこれに伴い大幅に増大している。都市部においてはライフライン 管の主幹線配備がほぼ完了し、現在は主な施工対象が枝線部に推移していることから、推進工法の中でも口径が700mm以下の小口径推進工法の需要が急増し てきている。しかしながら、地下にはこれまでに埋設されたライフライン管が多数存在しているため、新規ライフラインを埋設する場合には、この既存のライフ ライン管位置情報を正確に把握する必要がある。
 そこで本研究では、小口径管にも対応でき、かつ高精度な小型光ファイバジャイロを用いて、既存の埋設管の位置を検知し、把握する手法について種々検討し た。

2.光ファイバジャイロについて
 光ファイバジャイロとは、右回りの光と左回りの光の合成光の強度変化により位相差を求めることで角速度を検出するレートジャイロである。この角速度は連 続的に検出されるため、これを積分することにより相対的な角度変化が求められる。この特性を持つ光ファイバジャイロを搭載したマシンの走行距離と連続的な 角度変化情報を把握することにより、埋設管の位置が検知される。
                                               
3.試験概要
 光ファイバジャイロを用いた既設管の位置検知システムは、これまで適用された例がないため、位置情報の把握方法については全く検討されていない。そこ で、このジャイロの位置検知能力を検証するために、3軸の角速度を検出することができる光ファイバジャイロを円弧のレール上に走行させ、実際のレールの位 置とジャイロで測定して計算した位置とを比較し、光ファイバジャイロによる位置検知システムの精度について検討した。また、得られた結果の位置誤差を補正 する方法についても併せて検討した。
 なお、位置検知システムの精度に関する検討には、写真1および2に示すような垂直方向および水平方向に曲率を有するレールを用い、これらのレール上に光 ファイバジャイロを搭載したジャイロユニットを走行させ、必要な種々の計測データを得た。




写真1 垂直位 置検知の試験
写真2 水平位 置検知の試験
図1 補正方法

4.試験結果とまとめ
 図1に垂直方向位置検知に関する試験結果の一例を示す。この図より、ジャイロの走行距離の増大とともにレールの真位置とジャイロの計算位置との誤差が大 きくなる。実際の現場では、既設管の入出口の二地点しか把握できないため、ジャイロの走行始点と終点位置を用いた位置補正する方法を考案した。その結果、 得られた位置誤差が大幅に改善されたことから、実際の現場でも光ファイバジャイロにより精度よく位置検知できることが分かった。
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