フライアッシュセメント界面活性剤混合材料を用いた充填材の 開発に関する研究
岩盤・開発機械システム工学研究室  修士2年 高橋 恵輔

1. はじめに
 現在、フライアッシュセメントを空洞充填材として使用する場合、ブリージングおよび流動性を制御するために各種添加剤が用いられるが、これらを用いても ブリージングを完全には制御することができない。また、地下水などが存在する場所に低濃度のフライアッシュセメントを注入した場合には、水中に散逸する現 象も認められる。そこで、これらの問題点を解決するために、フライアッシュセメントと界面活性剤を混合した新しい充填材の開発を試みた。本報告では、この フライアッシュセメント界面活性剤混合材料(以下、VTFCと略す)の開発と充填材としての可否の検討結果について述べる。

2. 現場実験および数値解析
 本研究では、まず地山の挙動について把握するために、砂礫模擬土層を造成し実験工事を行った。実験工事は、土被り1.5m、推進長24.8mであり、施 工には内径φ800mmの円形掘進機、850×850mmの矩形掘進機を用い、施工中および施工前後における掘進機直上および左右50cm地点の地表変位 量、地中変位量を測定した。次に、現場実験結果と比較するために、三次元応力解析ソフト3D−σを用い、円形および矩形モデルに対して解析を実施すること により地山の挙動に関して種々検討した。

2. 試験方法
試験に用いたVTFCは、水(W)、フライ アッシュFA)、セメント(C)、界面活性剤ビスコトップ(VT)等を練り混ぜたものである。試験は溶出試験、強度試験および材料分離試験等を行った。表 1に試験に供したVTFCの配合を示す。
 溶出試験に関しては、1リットルの純水中に試料を
100g注入し、常温常圧で静置するタンクリーチング試験を行い、一定時間間隔で溶出液を取り出し、原子吸光分析で溶出イオンの特定を行った。なお、試料 Aと試料Bを比較することで界面活性剤による挙動を確認した。また、石膏をセメントスラリーに混合することにより、硬化遅延ならびに六価クロム溶出抑制効 果が向上するという報告があることから、VTFCに石膏を混合した際に得られる種々の効果ついても併せて検討するために、試料A, Bと試料C, Dの比較により石膏による影響を調べた。
 強度試験に関しては、一軸圧縮試験を行い、界面活性剤および石膏が一軸圧縮強度に与える影響を比較した。また、材料分離試験に関しては、ブリージング試 験を行い、さらに水中にスラリーを注入し水中不分離性を目視で観察した。

3. まとめ
 VTFCに関して得られた結果を要約すると以下のとおりである。
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材料分離試験より、界面活性剤を混合することでブリージン グおよび水中分離を確実に抑制できる。
A
溶出試験より、界面活性剤を混合することでCrイオンの溶 出抑制効果が認められる。しかし、界面活性剤と石膏を混合すればCrイオンの溶出量は増加し、界面活性剤による溶出抑制効果が損なわれる。この原因として は、材料中に残存したAlイオンがCrイオンのエトリンガイトへの吸着を阻害したことが挙げられる。
B
強度試験より、界面活性剤を混合した試料の強度は、界面活 性剤を混合していない試料の強度の半分以下に低減する。また、石膏による硬化遅延効果は、界面活性剤の有無に関わらず大差はなく、2ヶ月程度の効果があ る。これらの原因として、界面活性剤を混合することで空隙が上昇して材料密度が減少すること、石膏および界面活性剤を混合することでAlおよびSiイオン の材料内残存量が低下してポゾラン反応が抑制されたこと、などが挙げられる。

 以上の結果から、VTFC  は、ブリージング抑制、水中不分離性を呈し、Crイオンの溶出抑制効果が認められることから、高性能で環境にやさしい充填材として期待することができる。 また、フライアッシュの有効利用拡大という課題の解決にも資することができると考えられる。
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