発破による振動の制御と起砕物への影響に関する研究
岩盤・開発機械システム工学 研究室  修士2年 前原 伸一郎

1.はじめに
 発破作業は鉱山や土木の分野で重要な技術として古くから利用されてきた。最近は都市部の構造物解体にも適用が試みられるようになり、改めてその有用性が 認識されつつある。しかしながら、発破作業は、法令によって火薬類の利用が制限されていることをはじめ、火薬類に対する危険な印象や振動・騒音・飛石な ど、他の工法よりも周辺環境に悪影響を及ぼす可能性が高いことが挙げられる。そこで本研究では、振動・騒音・飛石の中でも比較的、広範囲に影響を及ぼす発 破振動に着目し、発破作業を社会的に受け入れられ易くし、公共の安全を確保しながら効率的に利用するために、発破振動の現象を把握することを目的とした実 験および解析を行った。すなわち、鉱山において現場実験を行い発破振動の知見を得るとともに、有限要素法による数値シミュレーションを行い発破振動の予測 について検討した。また、発破の目的である発破後の起砕産物の粒度をできる限り最終製品に近くするために、振動と起砕産物の粒径への影響についても検討を 行った。

2.実験方法
 図1に振動測定の概要図を示す。現場実験を行ったF鉱山の1-B切羽の発破規格は、発破孔14孔、ベンチ高さ約10m、装薬長約7m、薬量約40kg、 孔径102mm、孔間隔4m、延時秒時差0.5sであった。振動計測点は、ベンチ中央からベンチの起砕面に対して垂直となる方向に、発破孔からR1 (m)、R2(m)、R3(m)、R4(m)離れた地点とし、それぞれセンサーG1、G2、G3、G4、を設置した。この際、最小抵抗線を3.7m、 4.2mおよび4.7mに変化させ、それぞれ2回ずつ測定を行った。また、起砕産物の粒度測定を行うために、発破後、起砕物をデジタルカメラで撮影し、画 像解析により粒度分布を求めた。
3.結果および考察
3.1 最小抵抗線の変化に伴う振動と起砕物の粒径

 今回測定を行った最小抵抗線の範囲内では最小抵抗線を変化させても振動への影響を考慮する必要はなく、起砕物の粒度のみによって最小抵抗線を決定してよ いことが分かった。また、以下に示す単位薬量と粒径の関係が得られ、この式により最小抵抗線、発破規格を決定することができる。
(XP80 : 重量基準80%径(mm)、t : 単位薬量(kg/m3))

3.2    振動予測
 図2に換算距離R/W1/3と最大振動速度との関係を示す。Rは発破孔からの距離、Wは装薬量を表す。これにより発破孔からの距離が近い場合と遠い場合 で振動値に違いがあることが分かった。近点の場合は振動値に大きなばらつきが見られるのに対して、遠点の場合には振動値と換算距離に良い相関が認められ る。このことから、発破孔から約60m以上では、以下の遠点における振動速度予測式を用いて振動を予測し、制御することができることが分かった。なお、本 現場の発破規格においては、約90kgまで装薬量を増やしても周辺環境への振動による影響は発生しない。
 (PPV : 最大振動速度(mm/s)、W : 装薬量(kg) 、R : 発破孔からの距離(m))
3.3    数値シミュレーション
 現場実験における発破振動現象を解明するために、2次元有限要素法ANSYSコードを用いて実験現場をモデル化してシミュレーションを行った。その結 果、遠点における振動波形は再現することができ、解析で用いたパラメータの妥当性は確認できた。しかしながら、発破振動は応力波の伝播経路上の亀裂や不連 続面の影響を大きく受けるので、発破振動を予測する際には現場データも十分考慮に入れなければならないことが分かった。



図1 発破振動 測定概 要図 図2 換算距離 R/W1/3と最大振動速度との関係


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