ハイウォールマイニングにおける坑道周辺の安定性に関する解 析的検討
岩盤・開発機械システム工学 研究室 修士2年 加藤 正剛

1.はじめに
 ハイウォールマイニングとは、露天掘り石炭鉱山において、徐々に採掘深度が増大し経済的な剥土比を超えるような場合、あるいは地形的に露天掘り採掘では 採炭が困難な場合に残壁(ハイウォール)に適用される採炭システムである。このシステムでは、大型の採掘機械を用いてほぼ水平方向に炭層を採掘していく方 法であり、露天掘りから坑内掘りに移行する遷移段階の採掘システムである。ハイウォールマイニングでは、ハイウォール底部にせん断応力が集中する傾向があ り、掘削の際にはせん断破壊に十分な注意を払う必要があるが、現在のところ明確な指針がない。そこで、本研究では3次元差分数値解析を用いてハイウォール 底部における坑道周辺の応力状態について種々検討を行った。

2. 解析モデルおよび解析方法
本解析では、図1に示すように砂岩中に土被り100m、稼行丈3mの水平炭層が存在するモデルを想定し、まず深度100mまでを露天掘りで採掘した後、ハ イウォール中の炭層に5×3×50mの坑道をハイウォール内に3本掘削した。なお、初期地圧は自重のみである。


 解析対象岩盤は弾塑性体とし、Mohr- Coulombの破壊基準を用いた。境界条件は以下の通りである。
@ 上端は地表面とし、拘束しない。
A 鉛直方向の境界は水平方向を固定、鉛直方向は 可動とした。
B 下端では水平方向は可動、鉛直方向は固定し た。
ハイウォールの角度は60°・70°・80°、ピラー幅は3,5,8mとし、図1のように座標軸を設定した。

     図1 解析モデル
3.    まとめ
(1) ピラー内部の応力状態について
ハイウォール角度の増大とともに、坑口付近のピラーに応力 集中が認められる。坑道終端部より奥部ではハイウォール角度による影響は、全く認められなくなる。
ピラー幅の減少とともに応力集中が発生し、応力の変動幅も 大きくなる。
坑道側壁部で圧縮応力が集中し、圧縮応力が最も集中する箇 所は中央の坑道の左右の側壁である。
(2) 破壊領域について
ハイウォール角度60°・70°・80°の全てのピラー幅 のモデルにおいて、坑道終端部の上部で大きな破壊領域が認められる。
全てのモデルにおいて、剥土の影響によりハイウォール底部 での破壊が進行する。ハイウォール角度80°ピラー幅5m・8mのモデルでは坑道掘削の影響により、ハイウォール底部での破壊がさらに進行する。



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