GISを用いた鉱山のリハビリテーションに関する研究
岩盤・開発機械システム工学 研究室 修士2年 梶原 深吾

1.はじめに
 現在、環境問題に対する関心は非常に高く、鉱山開発におけるリハビリテーションの重要性が増大している。リハビリテーションは、終掘後の再緑化のみを取 り扱うのではなく、斜面の侵食や河川の汚濁、酸性鉱排水等を防止するために、操業中から検討されるべきものである。したがって、リハビリテーションプログ ラムが適切に実施されれば、終掘後には採掘前の状態に環境を復元することが可能である。このことにより、政府ならびに地域住民からの信頼を得ることがで き、持続的な操業を行うことが可能となる。
 本研究では、リハビリテーションの中でも特に水質調査に関し、インドネシアの露天掘り石炭鉱山を対象に、GIS (Geographical Information System)を用い評価を行った。また、観測結果よりTSS(Total Suspended Solid)の値が基準値を超えている地域が認められた。TSSは、水中に存在する浮遊性物質の全量を意味するが、本鉱山において加速侵食が発生していた 可能性がある。そこで、侵食に関連するパラメータである排水密度(=水みちの全長/集水域の面積)を用い、操業過程における解析を行った。

2.モニタリング
2.1 概要
 酸性鉱排水や加速侵食の発生源の特定、汚染範囲の分布、リハビリテーションの成否を判断する上で、モニタリングを行うことは重要である。そこで、各種測 定結果の中でも特にTDS(Total Dissolved Solid)、TSS、TURBIDITY(濁度)について、本鉱山全体の広域図に関し結果および考察を行った。

2.2    結果および考察
 インドネシアにおいて基準値が定められているTSSに関して、本鉱山から河川に流入する段階における調査点では基準値を超えた地表水も観測されており対 策が必要である。そこで、TSSの値が高いことに対し、降水量または操業過程における地形変化が原因ではないかと考えた。降水量に関しては相関が認められ なかったが、地形の変化が著しい操業開始地域ではTSSの高い値が観測された。これは、採掘における急傾斜地域の増加や剥土による木々の伐採等による加速 侵食ではないかと推察される。そこで、地形変化により排水密度が変化するという観点から本鉱山における侵食状況について検討した。

3.排水密度に関する解析
3.1 概要
本鉱山における排水密度と平均傾斜角および相対高さとの関係を操業開始地域に限定し、採掘前、採掘域、リハビリテーション後を対象に評価した(パターン @)。次に、ある地域が将来操業を開始された場合について、採掘前後およびリハビリテーション後における排水密度を算出した(パターンA)。最後に、リハ ビリテーション後の地形に対し平均傾斜角を変化させた場合の排水密度の変化について評価した(パターンB)。
3.2 結果および考察
パターン@において、排水密度と平均傾斜角との関係は、“採掘前”に対し“採掘域”“リハビリテーション後”はばらつきが大きくなった。また、排水密度と 相対高さとの関係から、“採掘域”、“リハビリテーション後”のように相対高さが0.5付近のところで低い排水密度を示す場合、上流域まで水みちの分化が 進んでおらず侵食の初期段階であることが分かった。
 パターンAにおいて、操業を進めることで排水密度の増加が見られたが、地形表面が滑らかに、また傾斜角が小さくなったため水みちの分岐が増加し、水みち の全長が増大したため排水密度が上昇したと考えられる。また、傾斜を急にすることで流水量の増加が見られた。 
 パターンBにおいて、図1より傾斜角を小さくすると排水密度は増加した。リハビリテーション後の斜面を形成する上で傾斜を低く抑えること(本研究では 7〜8度付近である)は、排水密度の向上につながり、各水みちにおける流量も減少するため侵食を抑えることが可能となると予想される。


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