ポンコール金鉱山における採掘充填法へのケーブルボルトの適 用
岩盤・開発機械システム工学 研究室 修士2年 白石 直史

1.はじめに
 現在、ポンコール金鉱山のチウルグ鉱脈では上向き採掘充填法を採用し、採掘切羽における支保には主にスプリットセットが使用されている。その採掘の手順 としては、鉱脈を高さ4mほどの水平に展開するスライスに分割され、スライス毎に穿孔、発破、運搬、充填のサイクルで採掘が行われる。スプリットセットは スライス採掘毎に打設され、発破後破砕された鉱石中から取り除かれる。しかし、これらの作業は生産が非連続的であるため作業効率が非常に悪い。そこで、ス プリットセットの代わりに打設長さを調整でき、いつくかのスライスを一度にまとめて打設できるケーブルボルトを導入し、作業効率の改善を試みた。すなわ ち、図1のようにグラウトを施した長大ケーブルを20m程度鉱脈に沿って打設し、スライス採掘毎に切断する方法を適用することにより、掘削前に採掘天盤を 支保することを可能になるため作業の安全性においても大きく改善される。しかし、鉱脈中には鉱脈に平行な節理が卓越していることが多いため、ケーブルボル トを図1のように打設すると支保効果は低下する。したがって、支保効果を最大限に発揮するためには、採掘切羽の岩盤特性を考慮に入れた打設方法について検 討を行う必要がある。

 そこで本研究では、ポンコール金鉱山のチウルグ鉱脈の採掘切羽にケーブルボルトを導入するにあたり、生産の連続性や効率、安全性において最適なケーブル ボルトの打設間隔、角度、パターンについて検討するためにFLAC3Dを用いて採掘切羽周辺の応力解析を行った。

2.解析

2.1    解析モデル
 ポンコール金鉱山のチウルグ鉱脈の採掘切羽をもとに図2のようにモデルを作成し、現場測定により得られた原位置応力、岩盤の力学特性を用いた。また、 ケーブルボルトについては一般的に使用されている材料のパラメータを用いた。

2.2 最適打設間隔に関する結果および考察
 まず、図2に示すように上向き採掘充填法においては一般的なケーブルボルト打設方法である鉱脈に平行な角度で打設し、この打設角度における最適打設間隔 について検討した。なお、ケーブルボルトは長さ20mのものを等間隔で打設し、その間隔を変化させて、採掘切羽周辺の破壊領域、天盤の変位量をもとに最適 打設間隔を決定した。この結果より、より少ないボルト本数で破壊領域、天盤の変位量を抑制できる打設間隔は0.78mであることが判った。

2.3 最適打設角度とパターンに関する結果および考察
 次に、ケーブルボルトの打設間隔を0.78m間隔で打設し、打設角度および打設パターンを変化させ解析を行った。この際、採掘切羽周辺の岩盤構造や安全 性を考慮に入れ、採掘切羽周辺の破壊領域、天盤の変位量をもとに最適打設角度とパターンを決定した。この結果より、得られた最適打設角度、最適打設パター ンを図3に示す。




図1 ケーブル ボルトの打設方法 図2 解析モデ ル 図3 最適打設 方法

--------------------------------------------------------------------
Return