ライアッシュセメントによるスレーキング性斜面の覆工に関する研究
岩盤・開発機械システム工学研究室 修士課程2年  新名 隆夫

1.    はじめに
近年、石油代替エネルギーとして石炭が再度注目を浴びており、石炭を使用する火力発電等の電力事業における需要が年々増大している。しかし、石炭需要の増 大に伴い火力発電所から排出されるCO2や石炭灰の処理問題や石炭鉱山のさらなる開発に伴う環境問題等の対策を講ずる必要性が認められる。
露天掘り石炭鉱山において、夾炭層岩石(ずり)がスレーキング性を有する場合、リハビリテーションの際に種々の工夫が必要となる。そのひとつに、スレーキ ング性岩石のずりをフライアッシュとセメントの混合材料に骨材として利用できれば、ずりの適正な処理や資源の再利用という観点から有用であると考えられ。 そこで本研究では、露天掘り石炭鉱山におけるずり堆積場斜面のスレーキング現象や酸性水の発生を抑制するために、現場で生産されるずりを骨材として、ス レーキング性骨材を用いたフライアッシュセメントを斜面のライニング材として覆工することの可否について検討する。
        


フライアッシュセメントによる覆工


図1 ずり堆積場の概念図(覆工前)
図2 ずり堆積場の概念図(覆工後)

2.    試験方法
  本研究では、フライアッシュセメント試料に対して、以下の試験を行った。
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Slaking Index Test:スレーキング性岩石にフライアッシュセメントを添加することによりスレーキング現象の抑制を検討した。
試験条件:配合比を変化させて試験
A 一軸圧縮試験:フライアッシュセメントを斜面に覆工するために必要な力 学的性質のうち、圧縮強度、ヤング率を求め、覆工の適応性を検討した。
試験条件:配合比、養生条件・期間、骨材のサイズ・種類を変化させて試験
B 透水試験: ARD(Acid Rock Drainage)問題を考慮するために、フライアッシュセメントの透水性を求め、覆工の適応性を検討した。
試験条件:骨材のサイズ、養生期間を変化させて試験
C pH・導電率試験:フライアッシュセメントを斜面に覆工した際に考慮し なければならない化学的性質を把握し、覆工の適応性を検討した。
試験条件:試料の状態(亀裂の有無)、配合比を変化させて試験

3.    まとめ
  本研究により、以下のことが明らかになった。
スレーキング性岩石にセメントを添加することによって、スレーキングを 抑制することが可能   となり、フライアッシュセメントの力学的特性には、フライアッシュの代替量および骨材自身   の力学的特性が大きな影響を与える。
フライアッシュセメントの透水性は、骨材のサイズに依存しており、骨材 サイズが小さくなるほ   ど透水性は小さくなる。
フライアッシュセメントの化学的性質は、セメントの配合量に依存し、そ の配合量が大きいほ   どpHは高くなる。
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