岩石の動的破壊特性の測定と数値解析による評価
岩盤・開発機械システム工学研究室 修士2年 井本 武夫

1.    はじめに
 発破作業の効率化あるいは発破解体技術の実用化において、飛石災害の防止対策について十分検討される必要がある。発破に伴う飛石の発生やその 軌跡は、岩石 の動的破壊挙動に大きく依存すると考えられている。本研究では、水中衝撃波を用いた岩石の動的破壊実験を行うことにより、対象となる岩石の爆源近傍及び自 由面近傍における破壊の状態、岩石の破断面と応力速度との関係等を検討し、その検討を踏まえた上でAUTODYNを用いた数値解析を行うことにより、爆源 のエネルギー解放過程から爆源近傍における破壊挙動、それが及ぼす応力波への影響および自由面での引張破壊挙動を明確にした。

2.    実験及び数値解析概要
 動的破壊実験装置の概略図を右図に示す。
本実験は、円柱形の岩石供試体と爆薬
の間に水を満たしたアクリルパイプを介
在させた。
この水により爆薬の衝撃が水中衝撃波に変換されるため、試験片に対する衝撃波を平面的なものにすることができ、かつ水を満たしたパイプの長さ(以下Lw) を変化させることにより、衝撃力を制御できるという利点がある。
 また、動的引張強度の算出に関しては、爆源と逆側の自由面の変位速度をレーザ振動計により計測し、同時に最初に形成される破断面の位置(以下δ)を特定 するために高速度カメラによる撮影も行った。
 解析にあたっては、2次元動的連続相互作用解析プログラムAUTODYN−2Dを用いた。このプログラムは、物理的には連続体力学を基礎にし、数学的に は 陽的有限差分法に基づいている。連続体の運動を記述する代表的な方法としては、従来からLagrangeの方法とEulerの方法が知られており、 AUTODYN−2Dではこれら両方の方法が利用できる。今回は、火薬、水、岩石と示される部分すべてに対して、上記で説明した連続体を記述する方法の1 つであるLagrangeの方法を適用した。

3.
ま とめ
本研究で得られた結果ならびに知見は以下のとおりである。

Lwが70mm以下の場合、Lwの増加に伴いδは短くなる傾向を示した が、これは爆源近傍での圧縮破壊や引張破壊の影響を受けているためである。

動的引張強度はひずみ速度の三乗に比例するという動的引張強度の応力速 度依存性をより広い範囲の応力速度領域で示すことができた。

岩石試料の直径が大きくなるほど、物体の動的引張強度は小さくなること が分かった。

水パイプを介在させることにより衝撃波を岩石試料内に平面的に伝播さ せ、Lwを変化させることにより衝撃力を制御できるという仮定を数値解析で検証した結果、仮定の妥当性が確認された。

実験結果と解析結果から、Lwが50mm以下の場合、岩石試料は爆源に 近い位置で破壊が生じることが分かった。
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