区  分

 

 氏  名

 森 田  智

論文題名    密閉型ボックス掘進機を利用したボックスカルバート推進工法の開発




 論  文  内  容  の  要  旨



 現在、我が国の生活関連事業として、昨今の高齢化社会などに代表される社会情勢、都市開発においては歩行者や身体障害者に優しい街づくりとしてのユニバーサルデザインへの対応が求められている。また、地方都市の活性化対策や利便性の向上の観点から、地下空間の高度利用や地下通路の増設等に対する需要が増加している。本研究では、このような社会的要求を解決するために密閉型ボックス推進機を利用したボックスカルバート推進工法を開発し、これによるライフライン敷設を普及させることを目指したものである。すなわち、本研究は管外周面抵抗値や地盤変状および曲線内の管の挙動について検証し、実証実験を通してその実態の目視観察や計測を行い、数値解析による予測値との比較を行いながらその精度を高め、実施工における妥当性を確認することによって、技術指針の確立を目的に行った。
 
  第1章は緒論であり、密閉型推進工法の概要とその原理および特徴を紹介し、その切羽理論を述べた。既往の研究では、ボックスカルバート渠構築工法について概説しその特徴について述べるとともに、既往のボックス掘進機についての分類・特徴について調査し、さらに密閉型推進工法における周辺地山への影響についても調査し、最後に本研究の目的について述べた。
 
  第2章では、推進されるボックスカルバートについて検証を行った。内容としては、ボックスカルバートの肉厚や形状がボックスカルバート強度に与える影響、推進時の推進管外周面抵抗力の違いおよび推進力伝達軸心の違いによる許容推進延長の変化について3次元数値解析により検証を行った。併せて既存のボックス掘進機を検証することで、本工法に採用する際の問題点等について整理し、その結果から最適なボックス掘進機の構造について検討し、推進システムの構築のための指針を提示した。

  第3章では、ボックス掘進状況についての数値解析による検証を行った。すなわち、推進時の周辺地山への影響について2次元および3次元有限要素数値解析により検討するとともに、掘削添加材の逸泥現象の基本になる泥水の浸透挙動解析および実際の掘進時の切羽メカニズムから生じることが想定される泥水の層流・乱流の実態を検証した。3次元有限要素解析の結果から、推進の進捗に伴いテールボイドが塑性化し、切羽圧力の伝播が発生しなくなるモデルにより、推進に伴う地山の影響について評価できることが判明した。さらに、テールボイドを構成する物質の強度が高いほどテールボイド沈下を抑制することが可能となることが確認できた。また、2次元数値解析からは、推進管形状の違いにより、切羽管理圧力を変化させる必要があることが分かった。すなわち、特にボックス推進時においては、切羽圧力不足による地表面沈下量が円形に比べて大きくなることが想定され、十分な切羽圧力管理が必要となるということ、また、掘削断面角部の地山内において破壊の進展が発生しやすくなることが分かった。そのため、実際に使用する掘進機では、コーナー部の掘削面に丸みを持たせて地山のアーチ作用に期待しながら、応力分散を図る必要があることを確認した。

  第4章では、第2章において検討を行ったボックス掘進機の適用性、妥当性を確認するために、ボックス掘進機を用いた土被りの浅い掘進地盤における実証実験、掘進後の周辺地山の透水性変化、地表面や地盤内の変状計測、切羽やテールボイドの目視観察、2次元数値解析による地表面沈下や隣接地盤への影響評価のための事前解析を行い、実態との比較検証を行った。その結果、適正な切羽管理圧により施工することで地表面変位量は5mm以下に抑制することができ、また、掘進速度も円形掘進機と比較して20%程度速いことが分かった。これらのことから、今回開発したボックス掘進機の高い掘削能力が示された。

  第5章では、大口径ボックス推進工法を採用した施工事例を示し、その適用性および妥当性について検証を行った。本現場は国道直下を低土被りで通過するため、道路交通への影響を考慮し、地盤改良を施した上で施工を行った。さらに施工の前段階で現場において懸念される事項に対して種々の対応策を検討し、施工上の管理を十分に行った結果、施工精度も問題なく、計画推進力とほぼ同等の推移を示し、掘進速度も想定の2倍以上の速度を確保することができた。これらのことから、ボックス推進工法の現場への適用性が裏付けられた。

  第6章では、開発したボックス推進工法の実施工における採用に向けて既存の施工法との比較検討を行い、本工法の適用性や適用範囲について検証するとともに、今後期待されるボックス推進工法の用途について言及した。その結果、我が国の発達した交通網や狭隘な国土の中での様々な用途に対して、安全で確実、かつ経済的な施工が可能なボックス推進工法は、十分な適用範囲を有することが確認できた。

  第7章は結論であり、上述各章を総括したものである。


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